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結黄賊メンバー②

廊下を歩いていると、隣にいる藍梨が結人にあることを尋ねてきた。
「ねぇ結人。 カラーセクトってなぁに?」
「ちょっ、藍梨、その話は今なしな! ・・・学校では」
まさかの発言に驚くも、彼女をあまり怖がらせないよう二言目を小声で言いながら、結人は口元に人差し指を当て苦笑いをする。 藍梨もその行為を見て、焦りながらも頷いてくれた。 

そして二人は、最初に一番奥へと向かう。 1年1組だ。
「藍梨にあと5人、紹介したい奴がいるんだ。 また頑張って、名前を憶えてな」
そう言うと、彼女は笑顔で頷いてくれた。 藍梨を紹介するということは、今から会いに行く5人には予め伝えてある。
だから結人が女子を連れていけば“この子が藍梨なんだろう”と、すぐに気付くはずだ。





1年1組


「御子紫ー?」
結人は1組の教室に顔だけを覗かせ、一人の少年の名を呼ぶ。 それから数秒後、彼は結人たちのもとへと笑顔で駆け寄ってきた。
「おうユイ! ひっさしぶりじゃんよー! つか、ユイと俺の教室遠過ぎ。 端っこ同士だし、会いたくてもすぐ会いにいけない距離だから寂しいわー。 夜月たちとも遠いしな。
 ・・・あ、君はもしかして藍梨さん? 俺は御子紫勇気。 よろしくなッ!」

御子紫勇気(ミコシバユウキ)。 一言で彼のことを説明すると、何故か結人のことを神扱いしてくる元気な少年。 
前から結人のことを凄く尊敬しており、リーダーにきちんと忠誠を誓っている大切な仲間だ。 彼は未来と似ていて、結黄賊のムードメーカー的存在でもあった。 
お調子者で、みんなの前ではよく騒いでいる。 

―――こんな感じじゃ、もうクラスには溶け込んでいるみたいだな。
そう思う一方で、今は結人のことなんて眼中にない御子柴は、藍梨と楽しそうに話をしていた。 そんな彼らの会話に、結人は躊躇うことなく割り込んでいく。
「よし、御子紫。 俺と藍梨は付き合うことになったから、早速藍梨と連絡先を交換してくれー」
「はいよー・・・。 って、え? 付き合うってその、恋愛の?」
あまりにも突然過ぎる発言だったからか、それを聞いた御子柴はキョトンとした表情でそう尋ねてくる。 
「あったりまえだろー?」
適当に返事をした、その数秒後――――彼は冷静さを保てなくなったのか、急に声を張り上げてきた。
「え、あ、はぁ!? いつから付き合い始めたんだよ!? つか、俺たちがユイと絡んでない間に進展し過ぎだっての! え、マジでいつから付き合ったんだよ。
 このことは夜月たちも知ってんのか? 真宮は当然知ってんだろ? 他のみんなは? 俺だけ知らされていないっていうことはねぇよな!?」
「いいから早く連絡先を交換しろ! 今から他のみんなにも、紹介しに行かなきゃなんねぇんだから」
その言葉に内心嬉しく思いつつも、彼の興奮をあえてスルーし、わざと怒った口調で軽く言い返していく。 
若干結人の照れ隠しのようなものだったが、御子紫が渋々連絡先交換を終えたことを確認すると、結人たちは1組から離れた。 そして流れるように、次の教室へと向かう。
 




1年2組


このクラスには、結黄賊の中で一番仲のいい二人がいる。 教室へ着いて早々、結人は彼らの名を呼んだ。
「コウー、優ー」
二人はすぐさま結人のことに気付きこちらへやってくると、まずはコウから軽い挨拶をしてきた。
「久しぶり、ユイ。 元気にしてた?」
「ユイー! 会いたかったー!」
この二人は未来と悠斗と同じくらいに仲がいい。 正直に言うと、コウたちの方が仲よさそうに見える。 特別この二人は幼馴染でも、何でもない。 
一見、クールで落ち着いているコウと陽気な雰囲気を醸し出している優がどうしてここまで仲よくなったのかというのは、またいつか話すことにしよう。

まずは一人目、神崎コウ(カンザキコウ)。 といっても、コウというのは一応あだ名で本名とはほんの少し違う。
彼は自分の名が嫌いらしく『コウって呼んでほしい』と頼まれたことから、みんなはそう呼んでいた。
コウの説明はたくさんあるのだが、一番最初に言っておきたいことは、彼は結黄賊のエースだということだ。 つまり、結黄賊の中で一番喧嘩が強い。 
その理由は、いつか分かるはずだ。 結人とコウで一対一の喧嘩をしたら、結人が負けるというのは既に目に見えている。 結黄賊メンバーも、誰もがそう思うことだろう。
他には、彼は頭もよくて料理もでき、容姿もかなりいいためパーフェクト。 女子からも相当モテる。 よく告白をされては振っているため、彼自身は『モテるのは苦しい』と言っていた。 
羨ましい限りだ。 だが一つだけ、彼には欠点がある。 それは、仲間からたまに“自己犠牲野郎”と呼ばれていることだった。 これは彼の一番のいいところだが、一番の悪いところでもある。
自分を犠牲にしてでも人を助けようとすることから、犠牲のし過ぎで酷い事件に繋がることもよくあるため、仲間にとっては困っているのだが。 

そして二人目、瀬翔吹優(セトブキユウ)。 一言で言うと、とにかく可愛い少年だ。 容姿は普通に男だが、笑う顔がいつも可愛らしく唯一の癒し。 だから結黄賊からよく可愛がられている。 
だがもちろん、喧嘩は強い。 彼はコウとよく一緒にいることが多かった。 といっても、優がコウの隣へ自ら行くという感じだ。 
そんな優に対して、コウは鬱陶しいだなんてことは微塵も感じていないようで、寧ろ歓迎していた。 彼らは別に恋愛感情なんて互いにないだろうから、そこは勘違いしないように。

「えっと、藍梨さん?」
優が結人の隣にいる少女を見ながら、不思議そうな顔をしてそっと尋ねてくる。 そんな彼に、結人は藍梨の代弁をした。
「あぁ、そうだよ。 俺たち昨日から付き合うことになったから、早速藍梨と連絡先を交換してくれ」
そう言うと当然、この二人も大袈裟に反応してくる。
「は!? え、え、ちょ、突然過ぎて意味が分かんないんだけど! どういうこと? どうしてそうなったの!?」
「入学してから約一週間で付き合ったのか。 それは凄いな。 俺たちが知らない間で、そんなに進展していたなんてな」
優に続きコウもそう口にしてくるが、ここから先の会話は御子紫とほぼ同じなためカットする。 そして、次の教室へと向かった。





1年3組


「3組にも二人いるんだ。 御子紫だけが一人で、何か可哀想だけどな」
そう言って結人は、先程と同様3組に顔を出す。
「椎野ー、北野ー」
彼らの名を呼ぶと二人もすぐさま結人のことに気付き、こちらへ駆け寄ってきた。
「お、何々ー? もしかしてこちらが藍梨さん? 遠くで見るよりも近くで見た方が何倍も可愛いね!」
「俺は北野。 よろしくね」

北野は前に説明した通り。 北野流星。 結黄賊の保健係だ。 北野との過去は色々とあるのだが、彼だけは後から結黄賊に入った。 もっと言うと、結人と北野が仲よくなったのも去年のこと。 
その過去の話も、いつかするとしよう。 彼は静かで、常に中立な立場でいようとする。 御子紫と椎野と仲がよく、一緒にいることが多い。 

そしてもう一人は、椎野真(シイノマコト)。 椎野は、御子紫と一番仲がよく二人でいつも調子に乗って騒いでいる。 御子柴と似たような性格だ。 他に真宮とも似ていて、仲間のことはよく見ており些細なことでもすぐに気付きやすい。
相手の考えというより、椎野は相手の気持ちを読み取ることが得意で、相手の気持ちになって相談事に乗ったりするため絶対的な信頼を得ていた。 性格はうるさいが、実際はとても優しい少年なのだ。

「そんじゃ、俺と藍梨は付き合うことになったから連絡先交換よろしくー」
「はいはーい・・・。 って、は!? 付き合うって何!? どういう意味の付き合う!?」
「おめでとう! というか、いつから付き合い始めたの?」
「え、何で北野はそんなに冷静でいられるんだよ!? あ、ユイだけズルいぞ! 藍梨さんを一人占めするなんて! 何も俺たちには言わず、勝手に進展しやがってー・・・!」
「いや、元々藍梨さんはユイのものだから・・・」
連絡先交換以降の絡みは、またほぼ一緒のためカットする。





「憶えられた?」
廊下を歩きながら、隣にいる藍梨にそう尋ねた。 すると彼女は首を傾げ少し難しそうな表情をしながら、小さく呟き返してくれる。
「んー、頑張るー・・・」
―――・・・まぁ、一気に人の名前を憶えろと言われても難しいよな。
「憶えるのはゆっくりでいいから。 また分かんなくなったら俺に聞けよ。 そんで、4組には夜月、未来、悠斗がいる。 そんな感じかな」

八代夜月(ヤシロライト)。 容姿もよくて真面目な少年だ。 結黄賊の中ではコウの次にモテると言われている。 いつも仲間たちのことを後ろから見守ってくれ、頼れるお兄さん的存在。
また、結人と夜月は小学校から一緒だったのだが、色々と事情があり仲よくなったのは中学校の頃からだった。 この過去の話も、いつかすることにしよう。 
今後、この件は色々なことに繋がっていくのだから――――

関口未来(セキグチミライ)。 とても明るく、気さくな少年。 喧嘩っ早くて情熱的なところもある少年だが、こういう性格は結黄賊にいてくれて助かる存在。
事件が起きた時は、いち早く行動に移す。 たまにリーダーである結人の命令を聞かずに行動することもあるため、その面では手に負えなくいつも苦労していた。

その反対に、中村悠斗(ナカムラユウト)。 物静かでとても心優しい少年。 悠斗は未来と性格が正反対と言えば、その一言で済むのだが――――
悠斗は未来と幼馴染であり、未来の勝手な暴走を止められるのも悠斗だけだった。 結人が止めても駄目な時があるため、その時は悠斗に助けられている。 
彼は静かであまり自分の思いを口に出さないと思われているが、実際はそうではない。 結人たちにはそう見えるかもしれないが、未来にだけは自分の本音を言うことができていた。 
だから他のメンバーとは口論にならなくても、未来とはよく口喧嘩をするのだ。

以上が結人たち、結黄賊のメンバー。 
といっても後輩にあと10人はいるのだが、しばらくは会わないため今は紹介しなくてもいいだろう。 そしてラスト一人の少年に、自分たちのことを報告する。
「夜月ー」
4組を覗きつつ彼を呼び、廊下まで手招きした。
「俺たち昨日から付き合うことになったからさー、だから」
「あぁ、さっき未来たちから聞いたよ。 おめでとう」
結人の発言を遮り、夜月は優しく笑ってお祝いの言葉を並べてくれる。 そんな突然な発言に驚きつつも、結人も笑って返していく。
「おう。 ありがとな、夜月」
彼とは話が早く、すぐに連絡先交換をし終えた。





「どう? これからはみんなと、仲よくなれそ?」
結人はなおも難しい表情を浮かべている藍梨に、静かにそう尋ねる。 すると彼女はその表情のまま、またもや小さく呟いた。
「んー、私結構人見知りだから、どうかなー・・・」
「大丈夫だって。 きっとみんな、藍梨のことを大切にしてくれるぜ」
彼女を安心させるよう、優しく微笑みながらそう言葉を紡いでいく。 

だが藍梨は――――そのような発言をする結人を不審な目で見つめ、こう返してきた。

「・・・そう、結人が命令したの?」
「え?」

―――命令? 
―――・・・あぁ、俺がみんなに『藍梨と仲よくしてやってくれ』とでも、頼んだのかっていうことかな。
不安気な表情を浮かべる彼女に、結人は首を小さく横に振りながら苦笑して答えた。

「違うよ。 ・・・みんな、そういう奴だから」


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