23
――10年後
「コンコンコン」
部屋をノックする声が聞こえる。
「はい」
ボクが返事をする。
ボクも成長し16歳になった。
もうこれ以上歳を取らない。
本当か嘘かはわからない。
ただ生きている。
今は生きている。
それだけが事実。
「コンコンコン」
部屋をノックする声が聞える。
「どーぞー」
ボクは、そういって部屋の扉を開ける。
「コンコンコンって言ったんだから、返事は『なんのおと?』でしょ?」
小さな女の子がそういって頬を膨らましている。
女の子の名前は、歩。
親のいない子どもの中のひとりだ。
「そうだったね」
ボクが優しく微笑む。
「じゃ、もういっかいね!
コンコンコン」
「何の音?」
「おばけのおとー!
わー」
歩がそういって走る。
そしてこういった。
「朝ご飯の準備ができてるよー」
「はーい」
ボクはそう返事をすると食堂に向かった。
「ボクくん、おはよう」
万桜が、そういってボクに挨拶をする。
「万桜さん、おはよー」
その場には、焔やシエラ、かみさまもいた。
そして、ボクが入院してからしばらくして入った亜金やトール、玉藻もそこにいた。
「ひぃふぅ。ボクくん。
朝はパンにするかい?それともご飯にするかい?」
肥満の男がそういうとボクは返事をする。
「じゃ、食パンの目玉焼きのせで」
ボクがそういうと肥満な男がニッコリと笑う。
肥満な男の名前は、オー。
料理が好きな男だ。
世界一のコックを目指している。
「ボクくんこのそのパン好きだね」
「うん。
なんか好きなんだ。
でも、やっぱり僕、自分で作るよ」
ボクがそういってオーの方を見る。
「ひぃふぅ。ダメなんだな。
これは僕の仕事なんだなぁ―」
「そっか、いつもごめんね」
ボクは、小さく謝った。
「ひぃふぅ。気にしなくていいんだなぁー」
オーは、優しく微笑んだ。
すると歩が、窓から顔を出し外で剣の稽古をしている男二人に声をかける。
「タクさん、ブーさん、ご飯どっちにする?」
整った顔の銀髪の少年タク。
そして、まるで少女のようなキレイな顔にメガネを掛けている少年ブー。
タクとブーも孤児院の生徒だ。
そして、毎日訓練しているだけあって強い。
「朝は米だ!
米以外力は出ない」
タクがそういうとブーもうなずく。
「そうですね。
ご飯に味噌汁に鮭に味のり。
これぞ朝ごはんですね」
「いいな!それ!」
それを聞いたオーがため息混じりに言った。
「早く手を洗って入ってくるんだな。
ひぃふぅ」
「了解」
タクとブーは剣を鞘に収めると駆け足で玄関の方へと向かった。
「やぁやぁ!
みんな、朝から元気だね」
そういって白銀が現れる。
「白銀先生だー」
歩が嬉しそうに白銀に駆け寄った。
「歩ちゃんも元気だね」
白銀は優しく歩の頭を撫でた。