第二十五話
数分後ようやく落ち着いて、大悟が口を開いた。
「それでは、アイドル神頼み大作戦第1話を開催いたしますわ。」
「ネーミングセンス無さ過ぎねえ。それにアニメじゃあるまいし、第1話っていったい何よ?」
「これからアイドル街道を走る最初のストーリーってとこですわ。」
「ステキな訓練になるっぽいしィ。ワクワク。期待が膨光の字~。」
「よ~し。期待に胸を膨らませようとしても物理的に不可能な女子たちを憐れみながら、その付託に応えますわよ。」
「いちいち、表現ぶりがムカつく下女ねえ。いつか災いという名の祝福に包まれて、昇天させてあげるわよ。」
「それはありがたいプレゼントですわ。楡浬様の神痛力では、もらえそうもないので、気長にお待ちいたしますわ。それでは、衣好花様。アイドルには不可欠な歌のレッスンを始めますわ。」
「歌なのォ?忍者はァ、歌なんて歌わなくない?非得の字~。」
「そんなことではアイドルは務まりませんわ。いやだと思うものに、正面から体当たりすることで、人間は性徴するんですわ。」
「大悟はもう女子力十分過ぎるほどの三次性徴しているわよ。異次元性徴よ。」
「ほおっておきなさいですわ。そのうち、四次性徴してみせますわ。そんなことはどうでもいいのです。さあ、お歌いなさい、衣好花様。大空に向かって羽ばたくのです。」
大悟は歌詞が書かれたカードを衣好花に渡した。
「あ、あ、あたしはにん、にん、にんじゃああああ。」
「衣好花様。歌詞が違いますわ。それに、おなかから声をしっかり出さないと。」
大悟は衣好花の胴回りをべたべたと両手で叩いた。
「あっ、あっ。先生、もっと強く打ってくんない?要強の字~。」
「こうですの?」
大悟は衣好花のおなかをぎゅっと押した。
「あっ、あっ、あっ。もうちょっと強くがよくない?更打の字~。」
「こう、こう、ごう、GО、豪!」
おなかプッシュスイッチオン状態となった大悟。
「これを歌うのォ?メロディーがよくわかんないしィ。先生、手本を示してくんない?提範の字~。」
「わかりましたわ。オレが天使の喉を鳴らして差し上げましょう。音楽に対する新境地が皆様を桃源郷に誘いますわ。」