第二十八話
次の日の朝。
『宇佐鬼大悟よ。』
「む？誰だ？」
大悟は周囲を見回すが声の主は視界に入って来ない。宇佐鬼大悟よ。聞こえるか？
「誰かが話しかけてきたような？・・・オレの脳内か？」
『そうじゃ。あまりに狭い空間で閉口したがの。』
「うるさい。ほっといてくれ。狭い部屋を有効活用するために、最大限の努力をすることこそ矮小な国土で生きる日本人の特徴だ。」
『日本人を十把ひとからげにするでない。今このババはおぬしの脳内に話しかけている。おぬしの命、たしかにもらったぞ。男子の宇佐鬼大悟はこの世から消え去ったのじゃからな。あまりに短い人生じゃった。その神様見習いは疫病神じゃて。ハハハ。』
「ちょっと待ってくれ。いったいどういうことだ？」
『ぷにゅ、ぷにゅ、ぷにゅ』『ぷに、ぷに、ぷに』
大悟ベッドの左右には、大きなメロンとどら焼きが並ぶという現象が発生していた。
「あれ？この前見た夢の再現か。あれは正夢だったのか。でも内容が微妙以上に違っているぞ。」
「オヨメ姉ちゃん、朝から大胆♥」「馬嫁下女、どこ触ってるのよ！」
大悟の疑問は、両サイドから寄せる波への防御対策並びに苦情対応でいずこかへ消失してしまった。
結局朝早く目が覚めてしまい、まだ生徒が歩いていない時間帯に登校する羽目になった三人であった。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』
この世のどこかで大きな音が響いたが、聞こえる者はわずかであった。
