第二十四話
「神痛力?まさか、オレは何かの魔法にかかったのか?し、心配ないわよ。こう見えてもアタシの神痛力はホワイトカードで、ブラック、ゴールド、シルバーの次に高いレベルなんだから、問題ないはずよ。」
「それって、最下位カードランクという評価にしか聞こえないんだが。」
「そうとも言うわ。誉めないでよ。」
「オレのフレーズのどこに誉めパーツが存在している?ちなみに楡浬のはどんな魔法、じゃない、神痛力だ?」
「聞いて驚いて、腑抜けになっても知らないからね。価値逆転よ。物の価値を反対にするという素晴らしい神痛力よ。」
「なんだか、よくわからない神痛力だな。まあ、今のところ何ともないし、ホワイトカードレベルでは、神痛力の効果ってヤツは特記事項なしだな。ワハハハ。」
楡浬は大悟をじっと見ていたが、やがて、とある部位で視線が停止した。さらに、楡浬は大悟と同じ地点にある自分のからだを触っていた。楡浬の顔から血の気が引いていく。楡浬は大悟の顔をすまなさそうに見つめた。
「し、失敗だわ。」
「オレの顔は失敗作じゃないぞ。親にあやまれ!」
「そうじゃないわよ。アタシの胸がなくなったのよ。」
「あれ?本当だ。へこんだのか。いや待てよ。価値逆転の神痛力。・・・まさか、あの巨乳は元々神痛力で作ったニセモノだったのか?」
「そ、そうよ。悪い?胸の大きさは豊さの象徴。人間界の繁栄を祈って、大きくしてたのに、神痛力が切れちゃったわ。」
「巨乳は虚乳だったのか。その華奢なからだには不似合いだと思っていたんだ。貧乳は貧乳でそれなりのニーズもあるし、気を落とすな。貧乳だからって、神様の価値は変わらないぞ。」
「貧乳、貧乳言わないでよ!それより、馬嫁嫁、あんた、本当に嫁になったのよ。」
『ぷにゅ、ぷにゅ。』
「あれ?この感触、巨乳が復活したのか?」
大悟は冷たい視線を肌で感じた。無論楡浬のそれである。
「それ、大悟のものよ。」
眇めた目で、大悟の胸部を眺める楡浬の図。大悟のTシャツからは、大きなお椀が窮屈そうに頭を出している。
「こ、これって、いったい!オレは夢でも見ているのか。いや、これは絶対に夢だ。ほら、夢なんだから、頬をつねっても痛くないように、こうして、オッパイを触っても、何にも感じないハズだ。・ ・・あはん。ほら、自覚症状が十分だろう。ワッハッハッ!」
「真っ昼間から、公衆の面前で、自分の両手で胸を揉みまくるなんて、破廉恥極まりないわ。同性として恥ずかしいわ。」
「同性だと?オレは、れっきとした健全男子だぞ。」
「そんな忌々しい巨乳を突き出して述べるセリフじゃないわよ。ネタは上がってるんだから、いい加減に無抵抗主義のガンジーに愛想を振りまきなさい。人間、諦めが大切よ。観念することから新しい人生という概念を構築することができるんだから。」
大悟は人目をはばからず、落涙している。しかし、その涙は悲しいかな、持ちたくもない胸の谷間を光らせている。