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第三話 初めての冒険

 僕はキーと、僕の家の前で待ち合わせて二人で談笑しながらギルドに向かった。

 何だかデートみたいで気恥ずかしい。
 キーは欠片もそんなことを考えてなさそうだが。

「何か受けたい依頼とかあるか?」

 ギルドに到着し、依頼が書かれた紙が大量に貼られた掲示板を見ながらキーに尋ねる。

「精霊と契約したいなぁ~」

 キーがそう言ったので、僕は適当な紙を一枚ぺりっと剥がして受付に持って行く。
 スキルが「精霊術適性」なのだから早く契約したいのは当然だろうし、早く戦力になってくれた方が僕としても嬉しいので異議はない。

 このギルドでは、掲示板から依頼が書かれた紙を剥がして受付に持って行くことで依頼を受けることができ、条件を達成すると報酬が貰える。
 失敗すると一切報酬は貰えず、後日掲示板に同じ依頼が貼られてるのを見て悲しくなる。

 僕らは適当な依頼を受けて街を出た。

 僕は昨晩キーと別れた後鎧等も作った。軽くて防御力が高く、魔法耐性も高い優れものだ。
 キーのものも作ろうと思ったけどスリーサイズを聞いたら「アーくんの変態!」って言われて心が傷付き、さらに殴られて体も傷が付いたからつくるのやめた。

 代わりにスリーサイズを知る必要のないマントを作ったのだが、これがなかなかに良いものでかなりの自信作だ。
 魔法耐性が付与されていて、さらには透明になれるという便利機能まで付いている。ただしマントと体以外は透明にならないので服を脱ぐ必要あり。

 とりあえず出発だ。

 ギルド所属の冒険者にはランクというものが存在する。
 このランクというのは、おおよそその人の強さを表していて、魔物にも同じようにランクが振り分けられている。
 そして、このランクに応じて受けられる依頼が決まっているのだ。

 つまりなにが言いたいのかというと、高位の精霊が存在するようなところには今の僕らのランクではまだ行けないということ。
 依頼関係なしに入ることはできるが、今は依頼のついでに精霊との契約に来ているのだ。目的を違えてはいけない。

 因みにランクは上のランクの冒険者と決闘をして勝利すると上げることができる。
 初めてランク上がった人がどうやってあげたのか疑問だが、この制度が導入されたのが最近なのだろうと勝手に結論づけて考えることをやめる。

「よし、取りあえず初心者恒例薬草刈りの依頼を受けたから薬草がたくさんある森へ行こう。あそこの森には御神木があったはず。あの木にならそこそこの精霊が宿ってるはずだから帰りにでも契約しよう」

 あの木なら御神木として祀られていて、長く生きてるからそこそこの精霊は宿っているはずだ。
 そもそと精霊というのは「いる」ものじゃなくて「宿る」ものだ。
 だから、難易度の低い森でも、中位くらいの精霊なら契約することができる。

 僕たちは談笑しながら件の森へと向かった。

 ▼

「あ、ここにも薬草がある~」
「ここにもあるよ」

 そんな呑気な会話をキーと繰り広げていた俺はふとあることに気が付く。

「空暗くないか?」
「本当だね」

 次々と薬草が採れることが嬉しくてかなり時間が経ってしまった。今日は野宿するしかないか。

「仕方がない。今日は御神木のところまで行って野宿しよう」

 そう言うとキーも賛同してくれたので御神木まで歩いていくことにした。

 ▼

 しばらく経ち、僕たちは御神木のところで絶句していた。

 それもそのはず。御神木が燃えていたのだ。

「え?どうして?」

 キーが隣でかすれた声を出す。
 御神木は神の木だ。生半可なことじゃ燃えたりしない。

「おいニンゲン、何をしているのじゃ?」

 しばらく立ち尽くしていると背後から声が聞こえた。
 その声は明確な殺意を宿した声。僕は恐怖に体を震わせた。

「何をしているのかと聞いている」

 そこに立っていたのは大きな尻尾を生やした幼女。

「何をって……ただ、燃えてる御神木を見ていただけだ」
「見ていただけ?お主らが燃やしたのではないのか?」
「そんなことはしない。そもそも僕たちは御神木に宿る精霊様に契約していただく為に来たんだ。それを燃やすような真似はしない」

 冤罪は勘弁してほしい。
 幼女は僕を値踏みするように見回す。

「ふむ、嘘は付いてないようじゃな」

 わかってもらえて何よりだ。
 嘘をついていないとわかったからか、さっきまでの殺意は全くなくなっていた。

「お主なかなか強そうじゃのう。わらわがこの木をこうした犯人を探す手伝いをしないか?」
「……それで僕たちに何の利益がある?」
「ふむ、では無事に解決したらわらわの故郷―――竜族の里に来させてやろう。勿論そこには高位の精霊の宿る木もある」

 ふむ、これは願ってもないチャンスだ。
 竜族の里へ行けるのなら確実に高位精霊と契約ができる。
 ギルドへの言い訳がめんどくさそうだがまあどうにでもなるだろう。

 それにしてもこいつ尻尾生えてると思ったら竜族だったのか。
 因みにだが、竜族は知能を持ち、人間の姿になれる龍全般のことを言う。

「キー、どうする」
「アーくんさえ良ければ私はいいよ」
「よし、決まりだな」

 こうして僕たちは竜族の少女――いや、幼女に協力して御神木を燃やした犯人を探すことになった。

「お主何か失礼なこと考えてなかったか?」
「そんなこと全然全くこれっぽっちもありませんとも」

 無駄に鋭い幼女だった。

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