修行を積むは、勝利への道
あと3カ月、俺達は何をしていればいいんだろうか。
もちろん待機に決まっているのだが、とりあえず俺はクリムとミカエの服を買ってやることにした。
女子っぽいものを。
「こう……かなぁ……?」
ミカエは黒いミニスカに大きめの白いTシャツ、そしてその上に黒いコートを着てきた。
服はとりあえず色々買ってきたのだが。
「うむ、95点」
アベルが◎のお札をあげて言う。
俺とアベルは審査員だ。
「このちょうどいいダボダボ具合に膝まで無いくらいのミニスカ、そしてその恥じらいに萌え袖! 素晴らしいぞ!」
アベルはそう語り出した。やはり少し変態だ。
「でもこれじゃ、戦えないよ……」
「普段着として来ていけ。俺が許そう」
俺も少しスイッチが入ってきた。
「わ、私はこんな感じでしょうか……」
クリムは黒いロングスカートに紫のカーディガンを羽織っていた。
「大人っぽくてよい。95点」
アベルが採点をする。
俺達は三ヶ月間、ここに滞在することとなった。空き家生活だ。
誰もいない大きな家なので十分だ。
「さて、演習行こうか」
ミカエが呼びかける。
「あいよ」
「了解です」
俺達は少し離れた共同演習場へと向かっていく。
太陽は上がり、昼頃のカラカラとした日差しが俺達を照らしていた──
俺は能力に一切頼らずに剣と槍を駆使して迫り来る演習用のロボットを倒していく、というものだ。
しかし、中々ロボットが強いのだ。
「はいじゃ、行くよ」
ミカエが合図をしてボタンを押すと──
俺の周りはロボットで囲まれているのであった。
「くっ!」
ロボットと言っても人間と同じ強度なのでそういった心配はない。
しかし。
「ひよっ!?」
囲まれているので背後からの攻撃も来るのだ。
ロボットをまず見切ることに専念してみよう。
そう思い、まっすぐ走ってくるロボットを見つめてみる。
間合いに近づく。
振り上げる。
斬り下ろす。
避けて、
今だ!
「ングァ……」
ロボットはそんな音を立てて真っ二つになった。
見切りなら。
見切りならいける!
振り下ろすのを見切って避ける。見切って避けた後はがら空きのキルサイト状態となるので、そこを真っ二つにする。
まさに1発に全てを賭ける感じだ。
しかし1人しか見れないため、他の敵には対応出来ない。それに1発で仕留めないと動きを読まれてしまうのでどうしようもなくなるのだ。
これは一つのスキル、というレベルでいいだろう。
普通の剣術を覚えなければ。
俺は生憎、ステータス的には守備力が皆無のようだ。剣によるガードがまるで出来ない。
その代わり回避性能はまぁまぁよろしい方だ。守備力の代わり、と言った感じだろうか。
また来る。
方針としては「殺られる前に一撃でぶっ殺す」だ。
まさにロマン砲だ。ファイル〇ァンタジー零式で言えばジャックのような感じだ。
中々分かりやすい例え方だと自分で自分を褒めてやりたいところだ。
剣を前に両手で持つ。
剣、と言うよりは太刀のような感じだ。
来る。
フットワークで敵の攻撃を避け、背後、または横から一刀両断する。
それが俺の戦い方。
囲まれた時は片手で太刀を持ち、もう1本の普通の剣の二刀流で戦うスタイルだ。
目標が一体の時は太刀で、2体以上の場合は二刀流で。
誰も考えたことのないスタイル。名付けて、<武蔵の形>とでも呼んでおこう。
このスタイル、後々の戦いにおいて想像以上の功績を残すことになる──
一方、ミカエは。
「中々ね……」
ミカエもまた、ロボットと戦っていた。
ミカエは殆どの近接武器を使える。まさに戦闘のプロだ。
ブーメランにヒモをつけ、片端を持ってそのブーメランを投げると、そのブーメランはロボットを縛っていた。
それで縛られたロボット達に斧で制裁を加える。
その隙をつこうとした後ろのロボットも背中に掛かっている短剣で刺す。
遠くで弓矢で狙っていたロボットも短槍を投げて倒す。
「……ふぅ」
ミカエは額についた汗を払った。
「こんなでも……私は強くない。だって──」
ミカエは槍や短剣を引き抜いて呟いたのだった。
「もう1人の<弱い私>がいるんだから──」
クリムは射撃訓練をしていた。
普通の人には到底狙えないくらいの的の動きの速さを速く設定し、弓矢を構える。
「ふっ!」
矢は当たっていたのだ。
しかし、真ん中ではない。多少、いや、大幅にずれていた。
「くっ……」
クリムはまた弓矢を構え、また矢を放つのだった──
「どうでした?」
日もオレンジ色に染まる頃、俺達は演習場を出た。
「うーん……大体スタイルの基本は憶えたけど」
「どんな感じ?私ちょっと気になるんだけど」
ミカエが興味深そうに尋ねる。
「んと、太刀をこう構えて、来る敵に合わせて避けて切る、みたいなの」
「何それカスそう」
プークスクス、とミカエが嘲笑する。
「じゃあお前はどんなんだよ」
「私は何でも使えるのよ」
「器用貧乏ですねぇ」
プークスクス、と俺は嘲笑すると。
「ほほう。私を怒らせると世界の天候が豪雨になると知っての言動か」
「嘘つけ」
中二かこいつ。
「そうかそうか、なら私と今日勝負するんだな!」
「いいだろう、その勝負、受けて立つ!」
「はぁ……アホくさ」
クリムがそう呟いたのも聞こえず、いや、俺は聞こえないふりをして勝負を仕掛けるのであった──