#-02[Réalité immuadle - Ⅳ]
●焔月/四日
プリオール:アパート_イニティウム_103号室
「最近世間を騒がせているあのニュースの続報です。
本日明朝、狼女を発見したとの情報が入りました。これで四回目の報告になります。
政府は現在、狼女の正体を"妖"と暫定して捜査を進めています。
現在のところ被害報告はありませんが過去にも似た件があり、今回の件と過去の件の狼女は同一個体なのか、など色んな側面から引き続き調査するもようです。
みなさまも今後なにかしろ被害が出ても起きてもおかしくない状況ですので、気を抜かないように生活してください。
では、次のニュースです――――」
あれから一時間ほど経過したか。
気付けばもう昼だ。
起きてからまだ三時間ぐらいしか経過していないからか、なんとも昼と言う実感が沸かない。
ボクは洗濯や食器の片付けを終え、今後の予定を考えていた。
デスク・プラネットはまた画面が変わり、先程の殺人事件について議論している。
キャッチコピーは『終わらない連続殺戮、 プリオールの闇に迫る!!』。……友好的とは一体。
朝から飽きるほど流されるつまらないニュースの幾度となく表示される現場地図。
「あぁ、そうだ」
そんな地図を見ていたらとあることを思いついた。我ながら良いアイディアだ。
遠足感覚で思いついたが、たぶん他の"人"にそんなこと話すと、顔を青くされるのは間違いないだろう。
うん、実際に殺害現場まで赴いてみようと思う。
よし、善は急げだ! 早速、髪をクシで軽く梳き、身支度を整えた。
服は……別になんでも良いので、適当に手に取った黒と白のチェックの半袖のYシャツを赤のシャツの上に着る。
ボトムは数あるデニム生地のロングサイズのモノを選ぶ。暑くても足を見せるのはどうも落ち着かないのでどの季節でも基本的にロングサイズしか穿かない。それにレディースモノで少しサイズが大きいので通気性は抜群だ。
『相棒』が入っているショルダーポーチも忘れれずベルトループにセットし、ガスの元栓と水道の蛇口を確認。戸締りも完璧に……と思ったがこの期月、完全に閉じきったら部屋が蒸風呂に変わってしまう。
悩んだりもしてみたが窓は締めず網戸状態で出かけることにした。どうせ泥棒なんて来ない。網戸にしておこう。
もう一度準備に怠りが無いか確認して、全て大丈夫なことを改めて確認して玄関に向かう。
最近購入した青を基本色にしたスニーカーに足を入れる。少し大きいサイズを買ってしまっただろうか。紐できつく縛ってはいるものの少し緩く感じてしまう。
そしていざ出発しようと玄関の扉のドアノブに手をかけた瞬間、忘れていたことをひとつ思い出した。
ボクは玄関の小さな下駄箱上に飾ってある、一枚の折りたたまれた写真を見る。
そこには三人の人物が映っている。白と黒の正反対の髪の色の二人の少年とすらっと長い青白い髪の女性。ボクと兄と母の三人だ。
全員、満面の、曇りのないすがすがしい笑顔だ。
「……いってきます」
ボクは写真にそう静かに告げ、玄関のドアノブを回し、部屋を後にした。
◆