ようやく帰宅やでぇ
上に登っておばちゃんにマスターのことを告げ口したら木刀片手に階段を降りていった。
こわっ……。
外に出ると丁度チェニックたちが呼びに来た。
なんかものっそい顔で睨まれた。なんかしたか?
まあそんなことよりもだ。
やっと帰れるよぉ。
次は一ヶ月後にまた来るんだよなあ。
そんときにはヴァオリンも出来てるはずだ。
楽しみだなぁ。
村長に挨拶をした後、ヤクーさんにも挨拶をして村を後にした。
*****
現在帰宅道中二日目の夜です。
俺が見張りです。
が、ひっじょーに面倒な状況です。
焚き火の前であぐらをかきながら前世の趣味の一つである詰碁をやってるんだが。
俺の右側に幼馴染さんが座っとるんです。無言で。
ときたまチラッチラッとこっちを見てくる。
かれこれ一時間もこんな感じである。
なんの用だよ……。
ずっとこんなふうにいられるのもウザくてしゃあないな……。
「あのさぁ。無視しようと思ってたけどいい加減ウザいわ。なんか用があるんならさっさとお願い」
そう言って幼馴染さんの方を見ると、なんと涙目であった。
俺なんかしたっけえ?!
「うっ……あ…あの……き、昨日とか……その…ごべん……」
グスングスンと泣きながら謝られた。
「えー……。待って待ってなんで泣くの?」
「だ…だって……ずっと冷たい態度だったし……宿で話した時確かにひどかったって思ったら……申し訳なくてぇ……」
こいつこんなキャラなの?!
泣きすぎだろ!
ん?
こいつ酒飲んでるし……。
「おい酔っぱらい。謝罪は受け入れてやるからもう寝ろ」
「うっうっごべんなざいいいいいいい」
大号泣である。
あーもう!!
とりあえず頭を撫でてやりながら水を飲ませてやったら一〇分ほどで落ち着いた。
何なんだよこいつ……。
チェニックちゃんと管理しとけや……。
明日の飯にチョルコぶち込んでやろうか……。
あ、チョルコはアレだ。
Gのことだ。その辺さがすとすぐに見つかります。
「落ち着いたか?」
「うん……落ち着いた」
「んじゃもう寝なさい。明日も早いからね」
「うん……わたしもう寝る。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
なんかもう気分は母親だ。
ってまだ立っとるし……。
「はよ寝ろや……」
「えと……私の……」
「あ?」
「私の……な……な…まえ……」
「えーと……名前?」
「うん……。私の名前……リーシャ……」
おおふ……急に名乗りおったわ。
リーシャっつーのね。
「リーシャだな。俺の名前はパストだ。よろしくな。んじゃおやすみ」
「うん!おやすみパスト!」
なんかにこやかにテントに戻っていった。
調子狂うわ……。
次の日、おはようと言ったら無視しやがった。
はっ倒したくなった。
*****
「試験はどうだった?楽しかったろー」
依頼達成報告をした後、俺は先生に呼び止められてそう言われた。
「楽しいわけ無いでしょうが……。まあでもそれとは関係なく収穫はあったからよかったですけどね」
「そうかそうか。友達ができたか。私は嬉しいよ」
「何言ってるんですか?俺に友達なんかできてませんよ。知り合いはできましたけど」
ヤクーさんとかレデンとか。
リーシャ?
挨拶ができないやつなぞ知らんな。
「まあそういうことにしておこう」
「そういうことです」
そう言って俺はようやく帰宅した。
今日は部屋で適当に食お。
疲れたぁぁぁ……。