えー……(二回目)
いきなりの結婚要求だが、まとめるとこうだ。
村長の妹は二五歳。
つまり結婚適齢期が過ぎ去ろうとしている。
だが、妹さんはヴァイオリン……グロリアが弾ける人と結婚したがっていて、数々の求婚を断り続けている。
だが、今のところ村で弾けるのは村長一人。
しかもまともに仕事もせず、かと言って家事を手伝うわけでもなく、家でゴロゴロとしており、このままではただの穀潰しになる。
そこで、俺がグロリアを弾けたことから俺に試しにまず会ってもらえないだろうか。
こんな感じ。
いや、そんなニート女と結婚したくねえよ……。
主婦やってくれんならまだ話し合いの余地が生まれるかもしれねぇが、絶対やんねーだろそいつ。
このままではってもうすでに穀潰しだよ……。
それになんとなくだが、そいつは俺と結婚したがるとは思えない。
きっとヴァイオリン云々のとこも割と適当な理由だろうな。
チェニックに会わせたらコロッといきそう……。
あ、そうだ。
「俺は今はまだ結婚する気もないし、相手を探す気もない。それに多分妹さんは俺と結婚したがらないと思う。だけども、俺と一緒に来たチェニックってやつなら、もしかしたら妹さんも気にいるんじゃないか?一度チェニックに会わせてみないか?明日は依頼だからそれが終わってからとか」
この提案にお婆様は二つ返事で了承してもらえた。
無理やりしてもらうつもりはないらしい。
すまん、チェニック。
勝手にフラグ建てといたから頑張って回収よろ。
その後、お婆様や他の人たちからねだられたので、知っている曲を適当にメドレーした。
うろ覚えのところは即興のアレンジ。
軽快な曲やチャラチャラした曲が酒場の雰囲気にも合っていて気に入られた。
こういう雰囲気で弾くのは前世でも憧れていたから楽しかったわ。
それにお酒も入るからもうね。
途中から半分記憶がない。
ヤクーさんが、ビールを樽ごと飲んで豪快に笑ってたのは覚えてる。酒入ると人格変わる人っているよね。
とにかくこの世界に来て一番楽しかった。
卒業したら楽器を持って吟遊詩人みたいに世界を旅するのもいいかもしれないな。まあ就職して金がたまったらだがな。
*****
…………あー……頭痛え……。
……完全に二日酔いだな……。
調子乗りすぎた……。
とりあえず頭冷やしてからなんか飲んでアルコール抜くかな。
ちなみに全部魔法でなんとかなる。素晴らしき異世界。
窓から見た太陽の位置的に時間は一二時くらいかねぇ。
つか、チェニックいねーな。
布団の感じから結局向こうで寝たのかシネバイイノニ。
とりあえず大部屋の方に行ってノックノック。
返事がない。
留守かね。
つか、起きたなら起こしてくれてもいいだろうに。
チェニックの野郎。つか軍団め。
下に下りると、受付のおばちゃんが、
「他の人たちからの伝言なんだけど、二つあってね。男の子の方からは、『疲れてるだろうし帰りのこともあるからゆっくり村で休んでてほしい』、女の子の方からは、『邪魔なので来るな』、以上です。女の子達に何かしたの?」
えー…………
置いてかれたぁ……
その邪魔なのではどっちの意味ですかね。
チェニックとの仲のことですかね。それとも実力のことですかね。
つか俺いかねえと試験受けたことにならねえから点数0になっちゃうんだけど。
自己申告だから、あいつら下手すっと俺は参加してないとか普通に言いそうだし。
とりあえず追いかけよう。
戦闘に参加しないで傍観決め込めば文句は言われねーだろ。
そう思って急いで合流するため少しだけ本気走り。
いつもの俺ならまあいっかと、村に留まっていたが、なぜか今日は追いかけていた。
その気まぐれで最悪の事態は防げたわけだが。