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10話: ラノベとなろうの決定的な違い

「ラノベとなろうの書籍化というビジネスは、似ているようで違います」

と編集の方はいいます。
ラノベというのはそれなりに伝統のあるビジネスで、強いレーベル、弱いレーベル、有名な作家、売れる作家というのが大体固定しています。
いわゆる、作家を前面に出したプロモーション、というものが行われます。
そしてファンは「◯◯先生の新刊、新作だ!」と買っていくわけですね。

「ところが、なろう書籍は違います。ファンはレーベルや作家でなく作品についています。ですから、どこの出版社にもチャンスはあります。おまけに、作家の方が毎日Webで更新されることで作品には最初から一定数のファンがついています。広告宣伝費が重いラノベ業界とは、そこが根本的に違います」

たしかに、言われてみればそうです。
なろう作家には毎日更新する方も多いですし、人気作家ともなれば1日数万ユニークアクセスを誇る人も珍しくありません。
これは言い方を変えれば、それだけの宣伝広告を自前で毎日行っているようなものです。
本来のラノベであれば出版社が費用を出してやるべき露出を言われずとも自分でやっているわけです。

「要するにコストパフォーマンスがいい、というわけですか?」
「どちらかと言えば、リスクが低い、ということですかね」

ビジネスの話であることを強調するために敢えて「コスト」という言い方をぶつけてみると、編集の方は「リスク」の方を強調して言い換えられました。

リスクとは何か。出版業における最大の経営リスクは、先に述べた通り返本のリスクです。ある作品がどれだけ売れるのか。大量に印刷して返本されることにならないか。あるいは印刷数が少なすぎて商機を逃すことにならないか。

そのあたりの人気と初版部数の見積もりが出版業における最大のリスクであり、なろう書籍はそのあたりを「ポイント」や「ユニークユーザー」からある程度まで推し量ることができる。

それが、なろう書籍化というビジネスの最大の特徴だというのです。

なるほど、と目からウロコが落ちる思いでした。

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