新たに手に入れた日常其の壱
永海学園高等部新館5階には生徒会室しかない。生徒会室に来るのは俺と絵菜の2人のみだ。別になにをしているわけでもない。仕事して、高次元生命体を倒して、雑談して、それだけだ。別に彼氏彼女の関係じゃないんだからねっ‼
まあなんでこんなことを言い出したのかといえば、少し遡って説明しなくてはならない。
今日の昼の事だ。学食で昼飯を食っていた。ちなみにこのとき食べていたのは笊蕎麦である。旨いからな。別に盗み聴きをしたわけではなく、たまたま近くの席に座る女子生徒たちが話していたのが聞こえてしまったのだ。
『諫垣さんと北宮くんって付き合ってるよね?』
と。
ハァァァァァ⁉そんな噂流れてんのかよ⁉初耳だぞ⁉
てなわけ。分かってくれたかな?俺がなんで動揺してるのか。何処をどう見たら俺と絵菜が恋人同士だと思うんだ?意味がわからんわ。さてそろそろ現在に戻ろか。
放課後。生徒会室。隣では絵菜が寝ている。デスクチェアに座ったまま。昼の噂を聞いてしまった為か、どうにも集中して仕事ができない。それはそれ、これはこれと、分別ができればいいのだが生憎俺はそういうのが大の苦手である。先ほどから作成中の資料など一ミリも進んでいない。書いては消し、書いては消しを繰り返していると、絵菜の目が覚めたようで、
「光尚。おはようございます」
と言う声が聞こえる。俺は言った。
「ん。放課後だけどな」
ふと絵菜のほうを向く。起きたばかりだから当たり前だが寝呆け眼だ。烏の濡れ羽色の髪にはピョンと寝癖がはねている。可愛い。
いかんいかん。つい可愛いと思ってしまった。そもそもの見た目が美少女と言う言葉が似合う。そのうえ少し抜けている部分があるとどうしても可愛く見えるわけですよ。ええ。
俺は言った。
「寝癖」
絵菜が寝癖を手櫛でいすじりながら言う。
「あ、ありがとう・・・」
ヤバイ惚れそう。俺は言った。
「ごめん惚れていいかな?」
絵菜が戸惑ったように言う。
「惚れっ⁉へ?イマナントモウシマシタ?」
あ、ごっめーん☆心の声出ちゃいました誠に申し訳ございませんでした。俺は言った。
「すまんうっかり思ったことを口に出した」
絵菜が言う。
「えっと、惚れていいかなって、本気?」
俺は言った。
「まあ、本気だな」
絵菜が言う。
「いいよ」
ん?イマナントモウシマシタカ?俺は言った。
「絵菜?今なんと?」
絵菜が言う。
「いいよ。私もあなたのことが好きだから」
耳を疑ったね。今俺のこと好きって言ったこいつ⁉てか、さっきの告白に受け取られたってこと⁉俺は言った。
「あ、あのさ。俺は告白したわけではないんだが・・・」
沈黙が室内を支配する。暫くして、絵菜が顔を真っ赤にしながら言う。
「な、なななな。じゃじゃあ別に私の事は好きじゃないってこと⁉」
「いんや好きだよ?」
今好きになったからな‼絵菜が言う。
「はへ?てことは・・」
俺は言った。
「付き合うか!」
何故か俺たちは恋人となった。