第四十五話
「お、ヨース……も、戻ったの?」
それから。
永遠ともつかぬ間、もふもふして。
このまま行きつく所まで、果てるまでゆこうぞ魔王、なんて意気込んだところで。
遠慮がちなごしゅじんの、そんな声がかかる。
おれっちは、それになけなしの理性を取り戻し、応えるために言葉を紡ぐ。
「ああ、ティカのおかげさ。ティカが頑張って星を集めたから、戻れたんだ」
「よ、ヨースっ……よかった……」
今までで一番、感情を露わにするごしゅじん。
その顔をくしゃくしゃにして涙こぼすごしゅじんは、それでも違わずきれいで美しく、愛おしくて。
零距離な桃源郷が、ああ、矢張りここが最期の地であると実感させられる。
大いなる光の勇者は、決して魔王には勝てない。
せめてこうやって離さないから。
世界の平和は、みんなでよろしくやってくれ。
……なんて考えてしまうくらい、幸せだからいけなかったのだろうか。
泣きやみそうにない、ごしゅじんの紅髄玉(カーネリアン)に染まる瞳から零れ落ちる一滴。
調子に乗って、くちびるで受け止めようと思ったのが、やっかみの神の嫉妬心を煽ったのだろうか。
カッ!!
……と。
再び辺りが、真白に眩しくなって。
気づけばそこには。
ごしゅじんに抱かれた、全身真っさらな一張羅だけど、四本の足には黒い靴下を履き、尻尾の先だけ茶色い、世にも珍しい三色の紳士な猫がそこにいて。
「にゃっ、な、なんでもどっ」
「あぁ、またふわふわに……なっちゃった」
こんな事聞いてないぞっ!
おれっちたちは慌てふためき。
目に入った明滅するおれっちの日記帳を慌てて開く。
すると、何故かページが更新されていて。
―――星になるまで、第二幕。
ジムキーンの世界を安定させた後、次の世界へ行く……獲得星数、10。
星になるまで、残り獲得星数、100。
なんて書かれていたから。
「くっ。そう簡単に、上手くはいかないってこと、か。仕方ない。んじゃ、次の星目指して、頑張ろうかね?」
「うん。……頑張ろうね、おしゃ」
この桃源郷で果てるまで。
星を目指す旅は続く。
いつの日か、誰にも願われる星になるまで。
おれっちたちの、旅は続いてゆく……。
(つづく?)