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第一五話_座学。

ここで改めてフィレイのお屋敷とワイドワールドの構成を口頭で説明してみよう。
ワイドワールドの中央に位置する首都セルビア。
その西側の第三区画にある学校が最初に雅が落ちてきた都立西魔法学校という学校があり、そのほぼ真反対の東側に位置する学校が都立東魔法学校。
そのほかに北、南の学校もあり、小中高一貫で6,3,3の教育方針を取っている。

そして、東高(都立東魔法学校)から少し北西に向かい、品性のある住宅街の一角に位置する屋敷がフィレイのお屋敷ってわけだ。
そのフィレイのお屋敷の部屋の一つ、会議室なるところで雅は座学を受けている。

少し話を戻してワイドワールドとクローズワールドの位置だが、ワイドワールドは東、クローズワールドは西側に存在している。どちらも領土は同じくらいでその両方を合わせて二倍したくらいの面積を誇る広大な土地があるアスデスの丘が北に存在している。そして、アスデスの丘は北、西、東を雲を突き抜ける崖でおおわれている。

「はい、質問」
「なんでしょうかミヤビ様」
「今クローズワールドとワイドワールドは戦争してないんですか」
「はい、今はまだあちらからは攻めてきていません。二つの国の間には楼の門が設置されていて厳重な警備態勢でそれぞれを監視しあっています」
「じゃあ、アスデスの丘から他国へ進軍するってことはしないのか?」
「それはできません、こちらの地図を見てください」
そう言ってスミルは地図を広げる。
「こちらがワイドワールド、こちらがクローズワールド。そしてその北に位置するのがアスデスの丘です。ほかにも色々と国や名称がある地域はありますが、そこは省きますね。そして、こことここアスデスの丘に繋がる陰の門と陽の門があります」
「ワイドワールドは中央に門を作ってあるのにクローズワールドは西の端っこに作ってあるな」
「はい、実はクローズワールドとアスデスの丘の境界線はほぼ奈落が続いてまして、その幅も4㎞続いているので橋を架けようにも今の技術ではどうにもならないそうです」
「ふむ、なるほどな。でも西側に門があるならこっちこれるんじゃないのか?」
「いい質問ですね。ですが、それは難しいんです。ちょっと書きますね」

そう言ってスミルはマジックを持ち、北東の崖と記されている角ところの下のあたりから弧を描くようにクローズワールドの門の少し東側まで線を引いた。

「今、アスデスの丘を2つに区切ったのですがこのワイドワールドに近いエリアが比較的弱い魔物が出現するエリアになります。そして、このクローズワールドの門を含んでいるエリアが強い魔物が出現する地域となっています。アスデスの丘は南へ行くほど魔物の強さは弱くなっていきますが、クローズワールドの門周辺は危険度50といったところでしょうか」
「つまり、兵を送っても結構な数がたどり着く前にやられてしまうと…。あ、他の危険度も教えてくれ」
「えーっと、クローズワールド周辺が50なのでそこから北に行くにつれて100まで上がっていきます。ワイドワールドの門周辺は危険度10くらいです。南東の角は魔物は殆ど出現しない湖となっているので危険度は1です。そこからこの弧に行くにつれて危険度は20,30と上がっていきます」
「なるほどなぁ」
つまりこういうことだ。

      崖           アスデスの丘の北         崖
                  ~危険度100~    




  危険度80               危険度50                崖
                  ~アスデスの丘~



              危険度30      
                    
   
   危険度50                      危険度10     危険度1
  陰の門                        陽の門         湖 

クローズワールド                     ワイドワールド

「(こんなところか)」
雅は頭の中で簡単に整理しながら地図を頭に入れていく。
「なるほどな、大体理解できたよ」
「そうですか、よかったです。それでは魔法の基礎練習から始めましょうか」
「おお!ついに来たか!絶対上達してやるからな」
「はい、一緒にがんばりましょう!」
2人はそう言って笑いあう。

その様子を見ていたフィレイはというと。
「(居心地悪い…。べたべたしないでよ…)」
2人のイチャイチャぶりに心底あきれていた。


ーーー首都セルビアーーー王城バスカルーーー応接室ーーー
この応接室に一人の男がやってきた。
「おう、ゲンか久しいな」
「ああ、久しぶり、ジエル」
「何年ぶりだ。7年か?」
そう言いあって抱擁しあう。
「ああ、すっかり王としての威厳が身についてきたな」
「おうよ、しっかりと騎士団の方にも力を入れてるぜ、もしクロ(クローズワールド)が攻めてきた時の為にな。
「ああ、そのことなんだが、龍族のノール・レイティスをよこしてくれないか?」
「ん?理由を聞いてもいいか?」
「黄泉さんに関わることだから内密にな」
『黄泉』。その言葉を聞いた途端。ワイドワールドの現国王、ジエル・ライライゼは顔を引き締める。

「今季の召喚の事について聞いたか?」
「ああ、確か失敗に終わったんだよな?」
「……やはりか」
「どういうことだ?」
「いや、それはこの次に話そう」
「おう」

そうして、ゲンは居住まいを直す。
「その召喚の事なんだが、黄泉さんの孫が召喚された」
「…っ!?は!?」
「落ち着け。今は俺の家で匿っている。それであの手紙を渡したらその内容にアスデスの丘の北側の洞窟に『一人』で来いと書いてあったそうだ。一週間後に」
「…ふむ、たしかにノールは『人ではない』し、実力的にも危険度100は十分にクリアできるうちの騎士団の中でも精鋭中の精鋭だ。だが、そんな子供騙しみたいなこと通じるのか?」

「あの人はこういうのが大好きで俺にもよく出していたからな。例えば『このはしわたるべからず』とかな」
「ふっ、確かにな。あの人はそういう人だったな。いいだろう、旧友の頼みと、古人の挑戦状だ。
許可しよう。話はつけておく。…それで、孫の事だが。俺の予想では」
「ああ、どこかで情報が書き換えられている。普通だったら黄泉の孫というだけでも崇められたりと騒がれたりするものだが、そういうのが一切ない。まぁ、『黄泉の孫』というのを言いふらしてないだけかもしれないが。それと、あの子はキャパシティが測定不能だったそうだ。なのに『騒ぎ』になっていないんだ。絶対に学校中の噂になっているはずなのに」
「これは…あの連中の仕業かな?」
ジエルは尋ねる。
「恐らくそうだろう。そちらでも色々と調べてくれないか?理由が分からないんだ。黄泉の孫の存在を隠す理由が」
「分かったこちらでも捜査に当たってみよう。何かあったら連絡をする。くれぐれも気を付けてくれ」
「ああ、そっちもな。じゃあ、またな」
「おう、元気でな」

そう言って旧友の背中に手を振る。

「…こりゃ、とうとう動き出してしまうのかな?まったくもって遺憾であるなぁ…」
そう言ってジエルは椅子に座り窓の外の澄み渡る青空を見上げた。

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