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僕の住む町には大きな大きな桜の木があり、それにまつわる言い伝えが2つある。
1つめは桜の木の下でハートの葉っぱを手に入れると好きな人と両想いになれる。
2つめは桜の木の下で春小町さんの声を聞いたら両想いになれる。
春小町さんって誰だろう。
なんて突っ込みを入れたくなるが誰も不思議に思わない平和な我が町。
桜野町。
僕は好奇心旺盛な方ではなかったがある出来事がきっかけで気になって仕方がなくなった。
おじいちゃんが部屋の片付けを依頼してきたのは半年前。
お小遣いを餌に釣られた子供な僕、柾木悠人。
まだ15歳だからいいのだと言い訳を口にしながら、まずは押し入れを開けた。
壷や花瓶に釣り道具。
習字道具にオモチャ……
色んな物を押し入れから出しておじいちゃんに確認しながら要、不要の仕分け。
と、かなり古いノートが押し入れの隅から出てきた。
「おじいちゃん、これは?」