遠征試験開始
今日は遠征試験当日です。
あれから二週間。
頑張りましたよ。
ええ。
ソロで受けるために色々と頑張りました。
でもね、あいつがね、すごくね、ウザいの。
なんかね、とにかくね、ウザいの。
毎日だよ?
無自覚で可哀想な子を見る目でね。
無自覚で上から目線でね。
語るの。
すごく語るの。
そんでいつも周りのクソハーレム軍団がね。
「チェニックが話しかけてあげているのよ?嬉しそうにしなさいよこの根暗!でも、仲良くはしないでね。チェニックの評判が悪くなっちゃうから。あと、遠征ではグループに入れてあげるけど邪魔しないですみで荷物持ちでもしてて。試験結果が悪くなったらあんた○すから」
ってチェニックが居ない時に囲まれてすごまれたの。
怖くて何も言えなかったよ。
女の子怖い……
だから変に何もしないで、おとなしく付いて行くことにした。
怖いから。
そんなわけで、俺はハーレム軍団の荷物持ちとして、ついていくことになった。
運動場の朝礼台みたいなところの前で整列していると、壇上に学長が上がった。
ちなみに学長はすだれハゲのデブ。
「えーおはようございます。皆さんが待ちに待った討伐遠征試験の日がやって参りました。天候にも恵まれ、絶好の試験日和です。今日から一週間という短い期間ですが、同じグループのお友達と親交を深め、切磋琢磨してこの試験に臨んでいただきたい。では討伐遠征試験を開始いたします!」
ここは小学校かよ……。
つか討伐遠征試験だぞ。
そんな運動会とか林間学校みたいなノリでいいのかよ……。
学長の話とかお偉いさん方の話が長いので、聞き流しながら討伐遠征試験の詳しいルールを復習しておこう。
試験期間は六泊七日の一週間。
試験日当日、それぞれのグループリーダーに課題の依頼用紙が配られる。
依頼は基本的にランダム。
事前に申請しておけば、難しい難易度の依頼に挑戦することもできる。
基本的に期間内に学園まで帰って来なくてはならない。
ただし、事前に申請して難しい難易度の依頼にしていた場合、その難易度に応じて期間は最大2週間まで伸びる。
大まかなルールはこんな感じ。
これ、怪我人とか出たらどうすんだろ。
その辺の対応が点数に影響するんかね。ちなみにうちのグループは事前申請している。
大丈夫だろうか。
なんか主人公っぽいやつだし、変なフラグ立ってないといいんだけど。
さて、そんなこんなで何人かのお偉いさん方の話も終わり。
試験スタート直前です。
これから、改めて皆で依頼の確認です。
「じゃあ、これから依頼の確認をしようと思うんだけど、多分みんなはパスト君のことをよく知らないだろうから、まず、自己紹介してもらえないかな。あと、何か自分で得意なことがあるならそれも教えてほしい。それによって何か役割をつくってあげるから!」
だからなんでこいつはいっつもいっつも上からな訳?
それにお前も俺のことよく知らねえだろうが。
「えー、俺の名前はパスト。足を引っ張らないよう荷物持ち頑張ります。よろしくー」
こんなんでいいだろ。
オメーらの邪魔はしねーよメンバーさん方。
「いい心がけね。しっかり私たちの荷物をもってついてくるのよ。あと、チェニックに迷惑かけたらゆるさないから!」
これは幼馴染み。ほどけば腰まで届くであろう赤色の髪をポニーテイルにしている。吊り目で性格がきつそうな女。背はチェニックと同じくらい。
名前は教えてくんないのな。
「ご主人様の邪魔をしたら殺す......」
この怖いのは元奴隷の子供。黒い髪を肩甲骨まで伸ばしている。背が低いロリッコ。たれ目なのに全然癒されない視線を向けてくる。
つか元だけどご主人様って呼ぶんだね。一体なにがあったんやろか……。
名前は教えてくんないのな。
「チェニック様の足を引っ張るようなことがあれば、即刻その首を落とします」
これは王女様。ウェーブのかかった金髪を腰まで伸ばしてる。ニコニコこちらを見てるが目は全く笑っていない。背はチェニックより少し低いかな。
首がかかってるのかぁ...
名前は教えてくんないのな。
「妾たちの、とくにチェニックの足枷になるようならすぐに八つ裂きにしてやるからの。安心せい。一瞬で送ってやるがゆえ苦しむことはない」
これは貴族のお嬢様。茶髪の髪をサイドでドリルにしている。背はチェニックより少し高い。
名前は教えてくんないのな。
「一応改めまして、俺はチェニック!何かあっても必ずみんなを守ってあげるから安心してくれ!みんな!今日から一週間、いい結果が出るように頑張ろう!」
こいつは鈍感馬鹿の頭ん中お花畑男。金髪を短く刈り上げている。背は170センチくらいかな。
改めて見るとやっぱ顔はいいんだよなこいつ。
童顔気味なのに男らしいってなにそれずるいよ。
ちなみに全員の服装は学園の制服です。
男子は半袖カッターみたいなやつにスラックスっぽいやつ。
女子も半袖カッターみたいなやつに膝上ミニスカート。だが、下に短パンを穿くというだっさい仕様だ。
色は男子も女子も、上はアイボリーで下は黒だ。
地味だね!
ま、この六名が今回の試験グループである。
チェニック以外のメンバーはなぜ名前を言わないんだろうね。
自己紹介の意味わかってないのかね。
そんで、なんで馬鹿はその事についてなにも言わないんだろうね。
気づいてないのかな?
ないんだろうな。
馬鹿だし。
しかもみんな心底俺を亡きものにしたいようだね。
暗殺とか警戒しとこうかしら...... 。
「続いて今回の依頼について説明する!依頼内容は『オーガ討伐』!高難易度依頼の為、試験期間は最大二週間まで!目的地はここから徒歩で約四日ほど先にあるダガンバ村。その村の付近でオーガが目撃されたそうだ。オーガ事態は臆病な性格な為、めったに人里には出てこないが、臆病であるがゆえに、もし人と出くわした場合、甚大な被害が予想される。俺たちの力で村の人々の安寧のため必ずやりとげなければなはない。君たちの力を貸してほしい!では行くぞ!『チーム・ブレイブ』!出陣だ!」
「「「「はい!!!!」」」」
......なんだこれ。
チェニックの妙に長ったらしく感じる説明はいい。
けどさ。
なんだよ『チーム・ブレイブ』って...... 。
いつの間に名前がついてたんだよ。
チョーだせーし。
しかも軍団は当たり前のように受け入れてるし。
すげえいい返事してるし。
俺こっから二週間も一緒なの?
精神もたねえよ!
あーくそっ
一応アイテムボックスにギター入れといてよかった。
見張りとかあるから道中じゃ無理だろうけど、村ついたら弾きまくったるし!
そんなこんなで始まったこのやる気の起きない遠征試験で、俺はずっと探していたあるものを見つけられるなんて思ってもみなかった。