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 エピローグ

 「汝、達則はこの女性・明日香を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓いますか」
 「はい、誓います」
 正装の聖女・アリーナ王女に問われ、白いタキシード姿の俺は誓った。

 「汝、明日香この男性・達則を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓いますか」
 「はい、誓います」
 アリーナ王女に問われ、この世界のウェディングドレスに身を包んだ明日香が顔を赤らめながら誓ってくれる。
 そんな明日香の姿を見ているだけで、そのあまりの美しさに俺は心臓がバクバクと言っている。


 魔神討伐を完了後、俺を除く勇者たち全員一致で俺と明日香の結婚式をロジック王国で開くことが決定したのだ。

 「世界平和のためには君らはとっとと結婚してしまうべきだ!」
 エミリーが真剣な表情で俺に迫る。

 「(おこと)なら、決めるべき時に決めるべきだ!」
 ライピョンさんが俺の両肩をつかんで、断言する。

 二人の言葉に哪吒子もアリーナ王女もシャリーもうんうんうなずいている。
 じいちゃんは『わしらも若いころはお前さん方みたいにシャイで仲がよかったんじゃ♪』とか言ってたけど、確か少し前におばあさんから離婚届を突きつけられたんだよね?!

 肝心の明日香はもちろん、『みんなありがとう!!』と大喜びで、女性陣にもみくちゃにされていた。

 「いや、元の世界に戻ったら…。」
 「戻った時はもう一回結婚式すればいいだろ?」
 エミリーに断言され、他のみんなもその通りと言わんばかりの顔をしている。


 そんなわけで俺に選択の余地は全くなく、魔族領とロジック王国やその周辺諸国との停戦が正式に決まると同時に結婚式が開催された。
 なお、防衛装置を含む古代都市の制御機構は明日香が『邪心や野心を持った者が扱えないようにプログラミング』した後、いざという時はエミリーが起動できるように調整した後、休眠させている。
 なお、エミリーの魔力量及び技術だと、余所へゴーレムを進軍させることなどはできず、魔族領全体の防衛に使うくらいが精いっぱいらしい。それでも、エミリーや魔族たちにとっては十分すぎるくらいの恩恵になるそうだが。

 『世界を救った勇者たちの結婚式』ということで、仲間の勇者たちだけでなく、魔族領や各国からの来賓もあるものすごく豪華な結婚式となった。

 魔族領、つまりエミリーからもらったオリハルコン製のペアリングを交換し、いよいよ誓いの口づけを…。

 く、口づけですか?!俺が戸惑っているうちに、明日香が近づいてきて、俺の唇を奪ってしまいました!!
 お兄ちゃんは明日香をそんな風に育てた覚えはありません!!
 というか、真っ赤になって恥らっている明日香が想像を絶するくらい魅力的で…いいか、達則、お前は兄……いや、もう兄じゃなくて、夫か?!!
 もしかして今晩から『やり放題?!』…いかん、鼻血が出そう!!

 超魅力的な明日香を見ながら、『昂ぶる自分自身』をどうなだめようかとしていた俺の頭の中にレベルアップ時にいつも聞こえてきていた機械的な女性の声が響いてきた。

 「おめでとうございます!達則さんは見事に今回のクエストを全て完了しました。
 規定に従って、元の世界に帰還していただきます。」
 ちょっと待て!この状態で帰還だって?!!

 俺は急に光に包まれると、周りの風景が見えなくなり…。



 …気が付くと、俺は2年B組の教室に戻っていた。
 ホームルームの時間だったのだろう。
 教卓には担任の木更津が、それぞれの席にはクラスメイト達が座って俺を見てびっくりしている。

 俺はタキシード姿のままで、俺の傍にはウェディングドレス姿の明日香が同じくビックリしてあたりを見回している。

 「達則!もしかして、魔王を倒してしまったのか?!」
 真っ先にゲーム友達の長谷部が立ち上がって近づいてくる。

 「そして、旅の間に愛情が深まったゆえに幼馴染と結婚したという筋書きだな!さすが我がライバル!!うらやまけしからんが、祝福してやろう!!」
 妙に男前に見える長谷部が俺を指さしながら叫ぶ。
 いやいや、何言ってんの?!大きくは間違ってはいないが、いつから俺たちはライバルになった?
 ついでに旅の間に愛情が深まったのではなく、双方『相手にべたぼれだった』と冷静に見て分かったのだ。

 長谷部の言葉に教室が大きくざわめき、男性陣の俺を見る視線が異様に厳しくなる。
 いつもきれいだが、さらに三割増しにきれいになった明日香が嬉しそうに俺の左腕に手を絡めているから、嫉妬されているようだ。

 「横宮。魔王を倒したというのは本当なのか?」
 担任の木更津が半ば信じられないものを見るかのように俺に向かって問いかける。

 「ああ、本当だぜ。正確には魔王軍の一部を操っていた邪神を倒したんだけど♪」
 ニコニコ笑いながらいつの間にか俺の傍にいた哪吒子が答える。
 見た目は中華風正装をした美少女になっている。

 「ええ哪吒子の言う通りです。それでご褒美を兼ねてお二人の結婚式を今していたところですのよ。」
 同じく正装のアリーナ王女もいつの間にか立っていた。いや、それどころか、他の勇者全員が周りにいる。

 「タツがみんなを召喚した後、明日香が常駐に変更してくれていたよな。だから、タツが転移された後、私たちもそれに引っ張られてここに転移してきたんだ。」
 水晶球を見ながらエミリーが説明してくれる。
 魔族領の正装のエミリーは宝塚風の出で立ちになっている。
 その横には白いタキシードのライピョンさんとじいちゃんもいる。

 「達則、その人達はもしかして?」
 「そう、我々はタツと六人の召喚勇者だ!」
 長谷部の問いにライピョンさんが胸を張って答える。

 ざわざわしていた教室は静まり返る。
 こうして立っていると俺以外の六人ともただものではないオーラを出している。
 その雰囲気にみんなが気づいて、圧倒され出したのだ。


 「臨時放送です!!富士山麓に『暗黒魔王軍』を名乗る怪物どもが現れ、現在、自衛隊と戦闘を開始したそうです!詳細はまたお知らせしますので、生徒、教員たちは教室で待機してください!」
 学校放送でとんでもないことが伝えられ、教室が再び騒然となる。

 「ナビ起動!!情報収集を行います!」
 明日香がいつの間にか魔女の服装に着替え、戦闘用ナビを起動させる。
 「ここから一〇〇キロくらいの場所にたくさん魔物が異世界から出現したのね。
 戦力的にはライガー軍と同程度と推計できるわね。」
 明日香がナビを見ながら素早く分析する。

 「よっしゃああ!!それくらいならすぐに殲滅できるぜ!さあ、行ってくらあ!」
 哪吒子が風雪輪を呼びだして、宙に浮かぶ。

 「よっし、わしも変身して女生徒の皆さんにいいところを見せるのじゃ!」
 じいちゃんも謎のかプセル(笑)を取り出して変身しようとする。

 「じいちゃんは今変身していたら、戦闘時間がほとんどないだろ。俺が一緒に運んでやるよ♪」
 哪吒子はじいちゃんを担ぐと風雪輪に乗って、じいちゃんの悲鳴と共にそのまますっ飛んでいった。

 「今回出た敵は二人だけで過剰戦力なくらいだけど、敵の本拠とか目的とか突き止める必要がありそうね。」
 明日香がナビからの情報を見ながらエミリー、アリーナ王女と話し合っている。

 「…えーと、みんな落ち着いているね。戻れるかどうか不安でないの?」
 「ああ、明日香が『常駐を解除』してくれればいつでも元の場所に戻れるからね。
 とりあえず、今落ち着いたら私やアリーナは一旦戻してもらうが、もし必要ならまた呼び出してくれればいい。」
 俺の問いにエミリーは淡々と答える。

 「しかもみんなの召喚ポイントが一ポイントにまで減ったから、ほぼ『呼び放題』と言っていいわね。」
 「いや、どうでもいい用事では呼ばないでほしいのだが…。」
 明日香に言われてエミリーが苦笑している。とは言え、心から嫌と思っているわけではなさそうだ。


 魔神は倒したけれど、平穏な日常を取り戻すのはもう少し先になりそうだ。


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