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第14話 エリーシアの主張

「あ、エリー、お帰りなさい!」
「ただいま。随分ご機嫌ね、シェリル」
 部屋に帰り着くなり、バサバサと乱暴に魔術師用のローブを脱ぎ捨てたエリーシアに、シェリルは嬉々として駆け寄った。

「今日は、ミレーヌ様と楽師団の音楽を聴いたの! そういうのも教養の一つだって。色々な綺麗な音が出ていて、とってもおもしろかったの! ミレーヌ様の膝に乗せられて、最初はすごく緊張しちゃったけど!」
 パタパタと尻尾を左右に揺らして床を叩きつつ、上機嫌に報告してきたシェリルに安堵しながら、エリーシアは笑って応じた。

「確かに王宮だったら、専属の楽師団位いそうよね。普通だったら本職の演奏なんて、祝い事とかお祭りとかで、耳にする位だけど。それにミレーヌ様の膝が定位置だなんて贅沢。楽しめたみたいで良かったわね」
「うん! あ、それから、明日のお昼前に、側妃のレイナ様と引き合わせるって言われたの。子供達も一緒ですって。できるならエリーにも同席して欲しいって言われたけど……」
 そこで言葉を濁したシェリルとみて、エリーシアは快諾した。

「そういう話なら、私も一緒に行くわ。魔術師棟の方へは、明日は午後から行けば良い事になっているし。王妃様が、先に手を回してくれたのかもね」
「良かった。あ、それじゃあカレンさんとリリスさんに、明日の朝、エリーが着る服を準備する様に、お願いしておかないと」
 早速控えの部屋に向かって歩き出そうとしたシェリルを、エリーシアは慌てて呼び止めた。

「ちょっと待って。私が着る服って、何の事?」
「だって王妃様と側妃様が揃っている所に出向くなら、それなりの服を着ないといけないと思うけど」
「私はお姫様ではないし、王宮専属魔術師として、この後宮に居住を許されているのよ? いわばこのローブが、私の仕事着かつ正装。当然、これを着ていくわ」
 そう言って、エリーシアが脱ぎ捨てたばかりのローブを指さした為、シェリルは困惑顔になった。

「えぇ? さすがに明日は、カレンさんに渋い顔をされそうだけど……」
「何と言われようと、却下」
(エリー、結構頑固だし。カレンさんと勝負したら、どっちが勝つかしら?)
 シェリルは密かにそう心配したものの、翌朝、事情を説明したエリーシアにカレンからの小言は出ず、二人は安堵してミレーヌの私室へと向かった。

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