第1話
俺は、春樹。絵描きで、25歳。その顔で25と驚かれるほど、俺は童顔らしい。俺の日常と言えば、日がな一日、アトリエで絵を描いて猫と話す毎日だ。ここだけの話、俺には動物の言葉が分かる。
今日もキャンパスを用意し、絵の道具を開けようと、カバンに手を伸ばした時、煩い声が耳に飛び込んできた。
「おい、春樹、いるんだろ。僕を無視したらいけないんだぞ」
何故、ノックも無しにに入ってくるのかな、君が、兄さんの息子で無ければ追い出すところだよ。
彼は春樹の双子の兄、春瀬の息子で名前は、空である。
「はいはい、ごめんごめん」
清々しいほどの棒読みで、春樹は謝った。
「謝ったから、許してやるぞ。僕は心が広いからな」
「でっ、なんの用事だ。俺は忙しい」
人の話を聞かない彼の耳には、俺の言葉は届いていないようで、いきなり春樹の腕を掴む。
「遊びに行くぞ」
面倒くさ。断るに決まっているだろ。
腕を振り払おうとした、その時、突如地面が光り始めた。
光が収まると、2人の姿は煙のように消え、後には、春樹の描いていた描きかけの絵のみが、残されていた。