鈴木さんはツッコミました。←いや何に
「ちょ…………あ、あの、今の状況が全く掴めないんですけど………?」
僕たちは、小さな集落のようなところを抜け、薄暗い森を歩いている。
「僕たち」というとなんか仲間みたいだな。こんな訳のわからない奴と仲間だなんてこちらからご遠慮してやる。
とっくに太陽は沈んでしまい、相手の顔を読むことも難しい。
僕にできるのは、腕を掴んでいる童女の柔らかな手の感触を堪能───
「あ?!」
不意打ちで腹を殴られた。
本当に怖いなこいつ。
「変態。なんだあんたは思春期か」
「は、はいぃっ!?僕がなんか言いましたか!?」
「…………………」
顔に書いてあった、とか…?
いやいやこの暗い中でどうやって表情を読むというのだ。というより、いつ振り向いたんだ!?
いや普通に怖えぇよ。
「どれだけあたしを罵れば気が済むの?『黙っていれば清楚系の童女』をいじめるなんていい趣味してるわね?」
呆れ顔で皮肉を言ってくる。
それでも身長が僕よりもずっと低いので可愛いものだ。
「え、待ってそんなことまで表情にでるんですか!?僕どんだけわかりやすい人なんだよ…
いやここは心読みスキルでも持ってるんでしょーかね?」
また舌打ちが聞こえる。
「普通に声に出てるでしょうが。」
ベタなオチ言わないでください。
「最初から聞いていたわよ。」
ちょっと止めてくださいっっっっっ!
「それにしてもあんたは何?さっきからさっきから違う時代の奴みたいよ?」
この童女からそんなファンタジーな考えが出てきたのは意外だったが、まあその察しの良さには感謝だ。
「あと、いい加減心の声だからといって童女というのをやめてくんない?」
…また漏れてたのか。心の声にまで気を使わなきゃいけないなんて神経がすり減るぞ!?
「あたしは《くろは》よ。黒い羽で黒羽。家名は鈴木。」
「……あ、はい。」
こくこく、と頷く。
「家名」かぁ……普通に「苗字」でもいい気がするのだが。
「くろはさんっすね!」
「きも」
「くろはちゃん!」
「うざ」
「く〜ろはたんっ!」
「死ね」
僕のガラスのハートがこのわずか10秒で粉々になった。ものすごい破壊力だ。
「そうだ、喋り方、あんた無理してるでしょ。心の声のでいいよ」
──────根は良いのかもしれない。
「あ〜、それでね、僕の名前…」
思い切り遮られた。
あからさまに遮られた。
僕の名前…
「それに私は童女じゃない。これでも高校1年だ。」
はい、ここにきて衝撃の事実。
………同い年だとぉぉぉっ!?
「同い年。同級生。」
「うっそぉぉぉぉぉぉぉ…………」
絶望に堕ちながらも、馬鹿な僕は童女(?)いじりなどということを考えていた。
同い年ネタで。
最っっっっ高の思いつきました。
「同い年なら、呼び捨てだな!青春だな!くろは!!!」
「!?!?」