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鈴木さんは出会いました。←いや誰と

「んー、なんか自然でいっぱいだなぁ…」

外国に届けられる資料で見た日本は、銀色のビルが眩しいくらいに輝く都会だった。
「うぉぉ!近未来!」と憧れていたものはどこへ行ったのやら、
…ここは、「浦島太郎」と言う絵本に出てきそうな砂浜だった。

「ってかおいフェリー!もう行っちゃったのかよ!」

ここのことなんも聞いてねぇよ!

手を伸ばしても、もう水平線の向こうに消えていきそうなフェリーは何かをしてくれるわけでもなく、とりあえず砂浜をうろつくことにした。

「っくぁぁーーー!空気がいいねー!」

澄んだ空に伸びをする。

まずは、家を探さなきゃな…

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随分と歩いたようで、太陽がだんだん下がってきている。
早く居場所を探さなくては。この国の治安がどのくらいいいかもわからないし。
周りにはまばらに民家が出てきていて、もう少し奥の方へと進めば小さな村のようなものに辿り着けそうだ。

……それにしても、違和感があるな……。

なんだろう。特に変わったものも無いのだが。

「まてぇぃぃぃぃぃぃぃ───」

そんな事を考えていたら向こうの方から大柄な男たちが走って来た。

え、いや僕なんもしてないんですけど!?

と焦っていたのだが、どうやら彼らの追いかけているのは僕では無いらしい。
両目0.2の僕の視力ではよくは見えないがなにやら小さいものだという事は分かる。
…………小さい女の子……………?
……いや、童女……………

──────突然腕を引っ張られた。

近くの植え込みに連れられる。
やっぱりこの国は治安が悪いようだ。まあ失うものは別に無いし諦めよう。

「ねえあんた、大丈夫?」

「…あ、は?」

振り向いてみれば、僕の腕を掴んでいたのは黒髪ストレートの童女だった。

「こんなとこでなにやってんの?私見たの初めてだから鈴木の人間じゃないんでしょ。」

鈴木の人間?聞きなれない言い回しだ。

「え…佐藤ですけど…」

「ほら駄目じゃんなんでこんなとこにいんのよ捕まったら即終わりじゃないバッッッッッカじゃないの!?」

「え、え…」

僕が言われていることの1割も理解できないまま狼狽えているうちに、勝手に話が進んでいく。困った童女だ。

「おぅぅぃどっこいったぁぁぁっ……」

遠くの方でさっきの声が聞こえる。
そういえばもううっすらと月が見えてきたな…

「チッ」

え……舌打ち、したのか…。
黙ってれば清楚系の童女なんだが。

「行くわよ」

また二の腕を引っ張られて連れて行かれる。
驚くほどの力。この細い体のいったいどこにそんな力があるんだ………?!

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