『ナニワの名物ドライバー』
「ツギクル……アナリティクスにアクセース!
接続完了っと!
それから、アクティブユーザーをかっくにーん!」
「むむむっ! 不正アクセスしてる
悪い子発見! 即座に成敗、バイバイバイ!」
「んでから~! めんどくさーいプロセスなんて
すーっ飛ばして!」
「『S:I:R:E:N』! Initializing! Ready!」
「うんうん! じゅんちょーじゅんちょー!
ってなわわけで……やっほー! Puzzler!
アタシは謎解き支援ユニット、美琴:01だよ!」
「これから、ズババッと謎を出しちゃうから
ビシーッと解いちゃってね!
んじゃ、いっくよー!」
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Title:『ナニワの名物ドライバー』
ワシの仕事はタクシーのドライバー。
今日も陽気に天下茶屋を走りまわるで!
「運転手はん、急いで梅田まで行ってくれるか?」
おっと! 早速客や!
「はいな、乗っておくんなはれ!
抜け道やったら、誰にも負けまへんで!」
「頼むで、運転手はん!
時間に間におうたらチップはずむわ!」
お客はんの笑顔や感謝の言葉に支えられ30年。
無事故無違反でここまでこれたのが、ワシの誇りや。
せやけど最近、ちょっとした悩みがあるねん。
「今日もあの子、おるんかな?」
夕暮れ時の梅田駅前交差点。
走りなれた通りを走っとったら、
制服姿の女の子が飛び出して来よった。
「うわっ! あぶなっ!」
ハンドルを切って急ブレーキを踏む。
ほなら、通りの真ん中に佇む女の子が
寂しそうな顔をしてワシをじっと見つめた。
やっぱり、いつもの子や……。
「自分な、何度言うたらわかるんや?
こんな真似したらあかん!
なんぞつらいことがあるんやろうけど、
いつかほんまに死んでまうで!」
窓から顔を出し、女子高生をしかりつける。
夕日に照らされた顔が寂しげで、胸がしめつけられる。
「おっちゃんで良かったら話を聞いたるさかい、
いつでも会社においで。」
社名が書かれたフロントドアをポンと叩いて笑いかける。
ほなら女の子はコクリと頷いて、
歩道の向こうへと消えていった。
「急に止まって、すんまへんでしたな。
せやけど、若い子にも色々ありまんねんなぁ。」
苦笑いを浮かべて後部座席を見やる。
でも、そこにお客はんの姿はなかった。
「なんや、またかいな……。」
未練を残した人間は死んだことに気づかず、
死ぬ前の時間を何度も繰り返すって話を聞いたことがある。
ワシはやれやれと肩をすくめて、天下茶屋へと引き返した。
ワシの仕事はタクシードライバー。
今日も大阪の街をグルグル走る。
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「はいはーい! 出題かんりょー!
ねえねえ、どうだった? いい感じに解けた?
って……アタシ肝心なこと忘れてるよね!
ええっと……どうやるんだっけ、神楽! 神楽!」
「……落ち着いてください、美琴。
スコアの確認です……。」
「ああっと! それそれ! 確か……。」
正解者と脱落者を確認して、
ユニークPuzzlerと
テクニカルPuzzlerの確認だよね!
えへへっ! これにて、謎解きバトルモード終了!
そんじゃ、またあそぼーね!
バイバイ、Puzzler!」
「……お待ちください。
ポイントの付与を忘れてますよ……美琴。
美琴……?
……どうやら、もう行ってしまったようですね。」
「……それでは、改めて
謎解きバトルモードを終了します。
謎解き、お疲れ様でした。」
「ツギクル……アナリティクス……。
ニューロンチェッキングプログラム……。
ディスコネクト……。
『S:I:R:E:N』フェーズ4に移行します……。」