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第六話_どうやら俺は

「おーやってるやってる」
「…なんだあんたか…」
試合が行われていた体育館の入り口に2人の教師が立っていた。
「何だとは失礼な。私だってしっかり教師をやっているつもりだぞ?」
「まったく…」
「まぁまぁ、…それで?今ゾルギア先生と模擬戦してるのが新しい異世界人かい?」
「…ああ。どうやら見ている限り魔法適正値と魔法限界値(キャパシティ)は化物並にあるが、近接戦闘では使い物にならなそうだ」
「ほーん?んじゃまぁ、今回も外れか?」
「まぁそうだろうな。あの確率で当たる方がおかしいと思うが…」
「……いや、違うな。ほれ、見てみろ」
「……」



―――模擬戦―――

「かはっ…っ!」
速い!
気付けば木に当たっていた。
「どうした?あんなに威勢が良かったのにもう降参か?」
「いや…」
「(どうやら痛みは現実とほぼ変わらないみたいだな。…だが。)」
「まだ、行けます」
「ほう…。受け流したか」
「…ええ、まあ」
「すまないな。いきなり本気で来いなんて言うからついな」
「…速いですね。流石です」
「おう、ありがとな。じゃあ、今度はお前から来ていいぞ」
と、いう風に先生は先ほどの1撃で自信がついたのか少し隙を見せている。
「そうですか、では…」

「ッ!?」
この模擬戦を見ていた何人が反応できただろうか。
光流は、いつの間にかゾルギアの後ろへ回り、剣先をその喉元に突き立てていた。
ぎりぎりで反応できたゾルギアは剣を薙刀のような武器ではじき返した。
「(へぇ。これは強い)」
続く剣劇。
「ちぃっ!」
ゾルギア先生が大きく踏み込んでくる。
「セエアッ!!」
「シッ!」
薙刀と短剣が交わり、火花を散らす。
光流は、そのまま右手首を捻りながら体を動かし刃を向ける。
流石に反応できたのかゾルギア先生は薙刀を戻しはじく。
だが、後ろへすぐに回り攻撃を行う。
「(流石にもう見切ったわ!)」
「はぁっ!」
後ろへゾルギアの薙刀が振り払われる
だが、そこには一枚の大きな葉っぱがあった。


「はあっ、はあっ、はあっ」
危なかった。流石に仮想空間といえど、この刃が先生を貫けばそれで相手は負ける。死ぬのだ。
「(こういうのって、男らしくないとか言うんだろうな)」
過去を思い出す。振り払う。
「(よし、もうあの人の癖は見切った。あとはそれを頭に入れて戦うだけ)」
「……よし」
そうして俺は森の中を進むべく足に力を入れた。



一方、フィレイのいる客席では。
「な、何?今の…」
「消えた?のでしょうか?全く見えませんでした…」
「ミヤビ様って魔術使えないんでしたよね?使ってなくてこの速さって…」
その試合を観察していた全員が目を点にしてその数十秒前の出来事について語っていた。



「…なんだ。逃げたわけじゃないのか」
「そりゃね。逃げませんよ」
「こちらが魔法を使うのは平等ではない。確実に勝つ。だから、武道で勝たせてもらう!」
殺気が増した。
木がざわざわとわめき出す。
「ふぅーーーっ」

互いに見つめあい…。

「やあああああっ!」
「はあああっ!!」
両者ともに雄叫びを上げ、交わらせる。
「(しかしっ、先生はよくこの狭い空間で薙刀振り回せるよなぁ!!)」
恐らく、先生は位置取りが上手いのだろう。実戦経験の豊富さを感じられる。
そして、雅はある時を狙っていた。

「…来た!」
右からの水平切り。この時先生の動きが少し鈍くなるのだ。
かがんで避けて、突きを心臓に向かわせる。
「ちいっ!」
誰もが光流の勝利を確信したのだが、あろうことかまたもや柄にはじき返されてしまった。
「っ!?」
大きくのけ反る。その隙に先生が斜め左上からの斬りを入れてくる。
「せあっ!」
その剣先が心臓へと突き刺さる。


直後、浮遊感とともに視界が開けて体育館の中に戻される。
「(俺、負けたのか)」
自然と悔しが湧き出てくる。あと少しで勝てたのだが、油断したせいだ。
「お疲れ様」
「先生…。お疲れさまでした」
先生が手を出してくる。雅はそれに応えて立ち上がる。
「素晴らしかったよ、君は筋肉は平均値だが、武器の使い方が上手い。これでは、90点はあげることができるな」
「後の十点は?」
「勿論、俺を倒せなかったことだ。おっと、すまないな君たち。もう話したいことは終わったからいいぞ。」
「……」
「えーと?」
無言でフィレイたちが迫ってくる。
「あの?どうかした?」
「凄かったわ!!とっても良かった!ねえ!どうやってあんなに速く移動できたの?魔術使ったわけじゃないよね?今度教えてくれない?」
「あはは…ありがとうございます…」
凄まじい言葉の連鎖に雅はただただフィレイお嬢さんに苦笑いを向けることしかできなかった。



「さて…今日はこれで終了。まだ午前だからってだらけすぎるなよ。さようなら」
帰ろうぜー。
「ねえねえどこ寄ってく?」
「これからどこか遊びに行かない?」
などと俺たちのいた学校でもよくあった放課後おしゃべりtimeが、この教室でも行われていた。
ちなみに、俺への見方が変わったのかというと、どうやら近接戦闘でも高得点を出したという事で、クラスメイトとして、認められていた。

「雅?これからどうするの?行きたいところでもある?」
「えーっと、どうしようかなぁ?フィレイの家の手伝いとかしたほうがいいかな?」
「しなくていい」
「う、うーんじゃあ、どうしよう…」
そうやってうんうんと唸っていた時。
「オオオカミヤビはいるか?」
開かれたドアの向こうに髪が紫の一人の女子生徒が立っていた。

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