再起動
簡単にアカウントを作る気にはなれなかった。
パート・オブ・ワールドを初めて1か月だったがそれなりに仲間を作り、キャラクターを強くしていた。廃人には程遠かったが、時間もかなりかけてプレイをしていたので、ショックも大きかった。
「いったん休憩するか」
つい言葉にしてしまっている自分がいた。
とは言ってもやることもないので、TVをつけてみたが、相変わらずこの時間はバラエティ番組ばかりだ。一体人のクイズを答える姿を見て何が楽しいのだろうか。そんなことを思いながら、適当にチャンネルを切り替えていた。
ピンポン!
「わかった!クジラ!」
・・・
「さあ、この後彼らを待ち受ける運命とは?!」
・・・
「昨日、また不審死がありました」
・・・
「あ、これうまい!」
・・・
こんな感じで22時台だというのにニュース番組は1つしかやっていないことに多少の腹を立てつつTVを消した。
さて、明日も会社なので風呂に入ることにしてさっぱりしてからパート・オブ・ワールドをまた始めようかな。と。のんきに考えていたが、ふと先ほどの戦いを思い出していた。
それにしてもさっきに竜は強すぎだったよな。ブレス攻撃でほぼ即死ってどういう設定なんだよ。しかも町中にやってくるとか反則でしょ。そういえばアイツはシャドウだったっけ。シャドウで竜とか組み合わせが悪すぎだよな。
シャドウとは人型くらいのサイズが一般的だとされている未知の生物であった。強さは様々とされているがゲームの設定上、闘うことが禁じられている種族の一つだった。弱小のシャドウもいるとされているが、殺された際の怨念が周囲に影響し、破滅をもたらす。そんな設定だった。
また倒すのは困難だともされていた。ほとんどのシャドウは出会い頭に逃げてしまうことが多い。まれに先ほどの竜のように好戦的なシャドウも存在しているようだ。
竜のシャドウの強さは半端なかったが本来は決して攻撃が無効というわけではない。HPが減れば回復し、危なくなれば逃走を図る。そんな倒しにくさもあり、シャドウの討伐の多くはSランクとされている。また討伐した際のドロップアイテムはレアアイテムだと言われていた。
出現場所に至ってはほぼランダムと言ってもいい。突如現れることが多く、シャドウ討伐のクエストがあることはほとんどない。まれに集団発生したシャドウ討伐が行われるらしいが、過去に発生していないとされていた。
しかも倒されるとアカウント抹消というからやばいと言いようがない。そう考えると急に連絡が取れなくなったフレンドも何人かいたが、シャドウと出会っていたのもかもしれない。
湯船につかりながらシャドウについて考えていただが、アカウントが消えたことに対して怒りがフツフツと沸いてくるのを感じた。
「シャドウ討伐」
これがキーワードとなった。