魔女喰い(止まらない涙)
俺は佐知を尾行していた。三ヶ月色んなことがあった。佐知の身の回りで起きている事のどれだけを俺は知っているのだろう。
何かの事件に巻き込まれている。死んだと思っていた佐知が生きていた。俺はまんまと偽の情報を掴まされていたのか…
佐知の尾行を終えて、帰宅しアルバムを開く日々は長く続いた。
佐知に似ているけど、違う女性ということも考えられた。
佐知に似ている女性は、俺に気がついても知らない人を見るかのような態度をしたからだ。
気軽に声を掛けに行ったわけじゃない。
尾行が失敗しただけだ。後をつけている事を勘付かれ、俺を見つめてきた。ように感じた。
でも、それも違っていたようで、俺の横を通り越してすれ違っただけだったのだ。
俺と目すらも合わなかった。まるで俺が死んでお化けにでもなって出てきたかのように、俺の存在がそこには居なかったかのようにだ。
そこで俺は思った。彼女は佐知に似ているけれども、佐知ではないのだと。
あの魔女と一緒にいる、佐知ではない女性として、俺は尾行を続けた。
魔女の情報を得るために。
そして、帰宅して開くアルバムを見ては、涙が溢れる日々を送っていた。
ある日の夕暮れの時間、佐知があまり行きたがらない小汚い居酒屋での事だった。
佐知に似ている女性はさくらと言う女性と飲みに来ているようだった。
俺が近くに居て聞き耳を立てていても、俺の存在はここにはない。
佐知に似ている女性「さくらにお願いしたいことがあるんだけどなあ」
さくら「いやよ。なんで私なの」
佐知に似ている女性「ね。ごめんね」
さくら「嫌だからね。絶対に嫌」
佐知に似ている女性「ひろっちの為に、ひと肌脱いでくれないかなあ♪」
さくら「ひろちゃんの為じゃないでしょ」
佐知に似ている女性「でも、ほら」
さくら「もお~!なんで私なの!」
見た目が似ていれば、やっぱり声も似るものなんだな。
俺は一人、やけ酒をあおり泣いていた。