4−5: ストレージ
それでもテリーは交代要員の到着を待った。
救命士が言ったとおり、二人の交代要員がやってきた。交代の挨拶をして、テリーはサービスセンターのロビーへと出た。
テリーはカウンターの前で立ち止まり、内線を手に取った。アシスタントが出るのも待たずに訊ねた。
「監視員テリー・ジェラルド。イルヴィン・フェイガンが搬送されたのは本社運営の病院か?」
テリーは受話器を顔から離した。
「くそ! 本社運営の病院? 場所を知ってるぞ! アドレスじゃない。くそ! 場所をだ!」
受話器を耳に戻すと、アシスタントが答えていた。
「……から、すぐにHUMANLY INTELLIGENCE本社運営の病院へと移送されました」
テリーは内線をカウンターの上に放り出し、ロビーから出た。
「エリー・アベルに」
端末を取り出し、そう言った。十回ほど呼び出し音が鳴ってから、端末にエリーが現われた。
「テリー、何?」
「イルヴィンが倒れた」
「どういうこと?」
エリーは端末を掴んで言った。驚きが見えた。
「それより聞きたいことがある」
「ちょっと待ってよ。イルヴィンは? 大丈夫なの? 倒れたって、どういうこと?」
「だまれ!」
テリーは端末に怒鳴った。
エリーの顔を見て、テリーは深呼吸をした。
「二つだけ訊く。イルヴィンは、あんたを婚約者だと言っていた。それに間違いはないな?」
「間違いないわよ。どういうことなの? 説明してくれたって」
「二つめだ。あんたはイルヴィンを観察してたとか、遊んでたんじゃないんだな?」
「何のことを言ってるの? どういうことなのか説明をしてよ」
テリーはそれには応えず、通話を切った。
「病院だ。病院に行かないと」
テリーはまた端末を目の前に戻して言った。
「研究所に。知能サービス、サロゲート、T.G.、I.F.に関して、『根拠がありそうに見える不可解な話』を参照し、ネット全体から検索および分類。それに基いて概要を作成」
そう指示すると、テリーは自分の車に乗り、走り始めた。
* * * *
幼ない頃からのことを思い出していた。
両親に抱えられたこと。
友達と遊んだこと。
学校で勉強したこと。
学校で遊んだこと。
小学校、中学校、高等学校、大学でのそれらのこと。
エリーに講習で出会ったこと。
エリーとの会話。
エリーにリングを通したネックレスを贈ったこと。
* * * *
夜が明けようとしていた。