事故の出会い
改めてリビングへと案内されて、椅子に座る。
向かい側には出迎えてくれた彼のみ。さっきでた女の人は幻聴か、ボイスチェンジャーだったのだろうか。
「あらためて、ようこそ。なんかいろいろと大変だったみたいだね」
「まあ、そうっすね」
「僕は天王路高校の3年の葉隠陣っていいます。一応、この寮の第2責任者になります」
「相良健です……第2?」
「第1は学園になるからね。だから、実質僕がこの寮を任されてるって思ってくれていいよ」
「は、はあ……」
よくわからないけど、とりあえずこの人が責任者か……そんな雰囲気を感じさせないのは天然の何かなのか。
「えっと、一応後で自己紹介の場はもうけるんだけど、簡単にいうとこの寮は他の寮と違います」
「まあ、なんとなく雰囲気からわかりますけど」
「まあ、いわゆるシェアハウスって言えばわかるかな?」
「シェアハウスっていうと、あの家賃とか共有でひとつの家で暮らすってやつですか?」
「そうそう。ちなみに男子は僕と相良くんだけね。いや~やっと狭かった立場がまだマシになる」
「……ちょっと、まってください。それって女子もいるってことですか?」
「さすがに、僕1人でこの寮ひとりじめなんてできるわけないでしょう。女子が3人になるよ。まあ、いまは2人で後1人は新入生がくるらしいね」
よし、整理するぞ。
この寮は特別寮だと言われていた。その理由は、このシェアハウス体勢にあると俺は話を聞いてる途中で思ったが、どちらかといえば男女の共同生活のほうなんじゃないだろうか。
つまり、この寮の男女比は2と3になるということか。
俺は思わず頭を抱えてしまう。
「え、えっと大丈夫?」
「だ、大丈夫です……他になんか最低限覚えておかないといけないことってありますか」
「家事は一応当番制なんだけど、少しの間は今までのメンバー3人で回すから、手伝いをしてくれると嬉しいな。それとお風呂については細心の注意を払って順番を決めるってことくらい?」
「まあ、気にする女の子多いっすもんね。了解っす」
「それで、相良くんの部屋なんだけど、玄関開けてまっすぐに階段あったでしょ?」
「ありましたね」
玄関で靴を履き替えたところにある左の扉がこのリビングで、右にもなんか部屋があった。
それで階段があって、階段の横を進んだ所は扉が開いてて見えた感じだと、洗面所だった。
「あの階段を上がって、右3部屋は女子部屋で、左に洗面所と男部屋ふたつがあります。階段に近い側は僕が使ってるから、ごめんね。奥の部屋で我慢して」
「いえ、それは全然構わないっす……あの、階段の横道の奥にも洗面所ありませんでした?」
「あそこは洗面所だけど、お風呂場だね。トイレが向かい側にあります。共用なのでいろいろ注意しましょう」
「聞けば聞くほど、年頃の女子がいる環境じゃない気がしてきたんですけど」
「相良くんなんかおじさんみたいな発言だよそれ」
「わかってます……とりあえず、部屋に荷物おいてきていいっすか」
「大丈夫だよ。お昼は食べた? 食べてないなら、一緒に食べようか」
リビングにある時計をふと見ると、時間は午後の1時を指していた。
たしかに少し腹が減ってきたな。
「うっす。食ってないんで」
「じゃあ、荷物おいてきたらまたリビングにきてくれればいいよ~。荷物は多分、3時くらいには届くと思うから」
まだ届いてなかったのか。
俺はリビングをでて、階段を上がった。
たしかに右には3つ扉があって、左には洗面所と2つの扉があった。
俺は、左の階段から離れた扉のノブをまわして開いた。
扉の先には備え付けのベッドと殺風景な部屋――そして姿見の前でポージングしてる下着姿の少女がいた。
「――えっ?」
「……は?」
扉が空いた音に気づいて、彼女がこちらを向いた時に目が合う。
そして彼女の顔は赤くなっていき――
「きゃぁぁぁあああ!!」
「うおぉぉぉっ!!?」
ふたつの悲鳴が寮内に響き渡ることになった。