84 レイさん、まだまだだよ
とんでも防具の説明という名の工芸神様の恍惚としながらの演説を聞いているうちに、カチーン!と、固まったレイさん。
〖お~い。レイさん、起きて~〗ゆさゆさ
〖ふぅ~、だらしないわねぇ。これくらいでっ〗つんつんっ
『人間て固まるとこんな音するんだな』こんこん
主神様と魔神様がゆすったり、つついたり。料理長がおでこノックしても起きません。ついでに普通はそんな音しないかな⋯⋯
〖困りましたね。まだ説明は始まったばかりだというのに⋯⋯しかも、まだ一つ目ですよ〗ふぅ~
工芸神様、いつもレイさんの方がやらかしてるくせに、だらしないと、ため息をついていると
〖おいおい⋯⋯あれは説明というか自画自賛に近いんじゃねぇか?〗
〖何を仰っているのです。素晴らしいものを素晴らしいと言って何が悪いのですか〗うっとり
〖あ~、そうか、そうなのか?〗う~ん
『武神、何言っても無駄だと思うぜ。こういう生き物だと思って諦めた方が懸命と言うもんだぜ』ぽんぽん
〖龍、お前も中々言うよな。神相手によ〗
『今更ってもんだぜ』チッチッチッ
工芸神様に突っ込んでみるも、不発に終わった武神様を、相棒の龍様が慰めるという図が。龍様のしっぽも中々芸達者。手もあるのにね。
『工芸神、もう説明を再開したらどうだ?』
〖何を言っているのです。観客無くして何を話せと?〗
『レイはいつから観客になったんだよ?』はぁ⋯⋯
工芸神様、相棒のグリフォン様にまでため息つかれてるし⋯⋯
〖う~ん、電撃でも浴びせてみる~?もちろん弱いやつね~〗ピリッ
〖源が聖域で愛し子にしてるデコピンとか?〗ピンッ
主神様と魔神様が起きないレイさんに困って物騒なことを言い始めると
『やめとけよ。後が怖いぞ。ん?⋯⋯あっ!俺、いいの貰った気がするぞ!たしか⋯⋯』ごそごそ
〖いいもの~?〗
〖何かしら?〗
料理長が何か思い出したようです。後が怖そうな物騒な案は回避されるのか?
『あ!これだコレ!』テッテレー♪
〖〖あっ!それっ〗〗
料理長がエプロンのポケットをゴソゴソ取りだした物。それは
〖〖『ピコピコハンマー!』〗〗テッテレー♪
主神様、魔神様、料理長の声が揃った!
『お?知ってたのか?』
〖知ってるも何も~〗
〖聖域で源が使ってるもの。愛し子に。今や守護精霊達にも配ってるわよ?〗
『へぇ~そうなのか。聖域に降りる前に『なんか必要になるような気がすんだよな』とか言いながら楽しそうに作ってたんだよ。んで、面白そうなもん作ってんな?って話しかけたらよ、試作品で良ければってくれたんだよ』ぴこぴこ
自分の手に軽く打ち付けて料理長がピコピコ鳴らすと
〖へ~ちょっと貸して~。いいなぁ、僕も欲しかったな~〗ピコピコ
主神様が興味を示した!
〖貴方は叩くより叩かれる方だから必要ないんじゃない?むしろ私に必要よ〗にやにや
〖魔神ちゃんひどいっ〗うるうるっ
『夫婦でいちゃついてんなよ』ピコっピコっ
〖〖あいたっ〗〗
ピコピコハンマーを奪い返されて夫婦で叩かれてるし
『まったく。そんなに欲しいなら源に作って貰って、神棚に供えてもらえばいいだろ?』
〖なるほど~〗ぽんっ
〖その手があったわね〗うんうん
『ったく、レイもほら、いい加減に起きろ!』ぴこんっ!
料理長、続けてレイさんにも、ピコンッ!
『はっ!?⋯⋯あ、あらあらまあまあ?私ったら?』
なにをしていたのだったかしら?
『やっと起きたか』ピコピコ
〖〖おお~〗〗パチパチパチ
レイさん起きた!さすがピコピコハンマー!
〖おや、やっと起きましたか。では、続きを〗
『ちょ、ちょっと待って下さいなっ!心の準備をっ』すーはーすーはー
レイさんが起きたのを確認した工芸神様はすぐさま解説という名の何かを再開しようとすると、レイさん、慌てて思いっきり深呼吸!
『さあ、どうぞ』ふんすっ
さあ、どんとこい!
〖あ~大丈夫かな~?〗
〖まあ、大丈夫じゃない?〗
『ダメな時はまたコイツの出番になるだけだぜ』ピコピコっ
ピコピコハンマー大活躍!
〖さてさて、では続きを。まず、籠手の方から。その籠手に魔力を流してみてください〗
『魔力?分かったわ』
工芸神様に言われて魔力を流すと
『あらあらまあまあ?なんだか色々なイメージが?』
頭の中にゲームのアイコンみたいに色々?
〖見えましたか?〗にこにこ
工芸神様、とっても良い笑顔!
『え、ええ。盾や刀やナイフ、薙刀や槍まで見えました。それに鍛治神様と思いっきり楽し⋯⋯趣味に走っ⋯⋯研究した暗器の数々、漫画とかで見るようなメリケンサックみたいな突起に、ハンマーまであったような?それに⋯⋯』
あれは、もしかして?
〖弓に、それから源さんに教えてもらったパチンコというものですね〗にこにこ
わあ、工芸神様ますます良い笑顔
『あらあらまあまあ、やっぱり⋯⋯』
あの姿は昔懐かしパチンコよね。源さんたらそんなものまで教えてたのねぇ。弓があればパチンコは要らないような気がするのだけど?
〖弓は警戒されるかもしれませんが、パチンコなら遊び道具位にしか見られず、敵の油断を誘えるかもしれませんよ?〗にこにこ
『それは、たしかに?』
こちらの世界では弓は遠距離攻撃に適した武器として一般的なものだけど、パチンコはあまりないみたいだものね。おもちゃとして子供が使っててもおかしくなさそうなのに。でもパチンコなら矢がなくてもその辺の小石でも使えそうよね。
〖マジックバックと同じ機能が付与してありますので、まだまだ増やせますよ。そして、どれも出したいと思えば簡単に出せますし、簡単にしまえますよ〗
『あらあらまあまあ?でもすでに私のインベントリや、先に頂いたマジックバックやアクセサリーもあるのに⋯⋯』
そう。私だけではなく、エルフさん達にも同じように物を収容出来るものを頂いているのよ。しかも複数。そして、その中にはすでに色々入っているのよね。武器だけじゃなくて、生活していくのに必要なあれこれが⋯⋯これも神様たちがお作りになったもの。それ以外にも天界樹様たちが作って下さったお洋服たちや、料理長たちが作って下さったお料理。私も作れるのだから大丈夫と言ったのに『何かあった時のための保険とでも思え』ってたくさん頂いてるのよね。
〖では、そちらは武器や防具専門にしたら良いかと。ああ、それから、そちらの物は全て大きさが変えられますよ。例えば盾は小盾から壁盾まで変幻自在です。便利でしょう?レイさんのアイデアで盾にナイフも仕込んでありますよ〗にこにこ
『あらあらまあまあ⋯⋯便利の一言で片付けられるのかしら?』
確かに盾については裏側にナイフを仕込んでおけば相手の不意をつけるし、武器に何かあった時の保険になるんじゃないかしら?とか伝えたわね。採用されていたのね。それから大きさが変えられるって、ここに入っている弓やパチンコなんかも同じってことよね?小さければ気づかれずに暗器みたいな使い方や、大きければ遠くから投石なんかにも使えるんじゃないかしら?剣や刀だって飛び道具にしてしまえそうね。例えば投げる時は小さい姿で、魔物や敵に当たる直前に元の大きさなり、それより大きくすれば⋯⋯あら?これって土魔法で同じようなこと出来ないかしら?小石を投げて敵の頭上で大きくすれば、ドスンっと⋯⋯
〖あはは~なんかレイさんが物騒なこと考えてる気がするね~〗
〖主神、気が⋯⋯ではなく、実際に考えてると思うわよ〗
『俺もそう思うぞ』
〖レイが物騒なのはいつもだよな〗
『武神、それレイに聞こえたら殺されるぞ』
ブツブツ言い出したレイさんを見て主神様たちが顔を引き攣らせてます。
〖さて、では何か武器を取り出してみてください〗
『あ、あらあらまあまあ、そうでしたわね。では、まずはこちららの世界に合わせてロングソードを⋯⋯』すっ
あらあらまあまあ、本当に手元にと思ったら、すぐ現れたわ。
『美しい剣ですね。見た目よりも軽いですし、しっくりきます』
手にすっと馴染んで、握りやすい。あら?
『なんだか、魔力を吸われているような?』
〖ちょっと違いますね。剣があなたを主人と認めて、あなたの魔力に同調しているのです。試しに魔力を流してみてください。そうですね、光属性の魔力が良いでしょうか(何か間違いが起こっても一番被害が少なそうですし)〗
『え?光属性ですか?』
〖はい。剣に光を纏わせるような〗
『なるほど、光る剣⋯⋯』
よくアニメや漫画で見るようなピッカーと光らせて目眩しにするとか?
ピッカーッ
〖〖ギャーッ〗〗
『レ、レイっ』
〖加減しろ!加減をーっ!〗
神様たちが悶絶するほどの閃光が!!レイさん、纏わせるを通り越してる!!
〖ふふふ。おやおや、サングラスをしておいて正解でしたね〗
〖工芸神ちゃん!?なにそれずるいーっ〗
〖あんたこうなること分かってたわねーっ〗
〖そんな訳ないじゃないですか〗にこにこ
〖〖嘘つきーっ〗〗
『目がっ目がーっ』
〖料理長!そのでっかい図体で出鱈目に暴れんな!〗
阿鼻叫喚!
〖まあまあ。『光の刃を飛ばして』とか想像しなくて良かったではないですか〗にこにこ
〖〖あっバカああっ〗〗
〖工芸神っお前なんてことをッ〗
『誰か目を治してくれーっ』
主神様たちの顔から一気に血の気がっ!料理長、非常事態に誰も助けてくれないっ
〖え?〗
工芸神様、やっちゃったね⋯⋯
『⋯⋯』
あらあらまあまあ、光の刃?そんなのもあったわねぇ?こう聖なる光を剣に纏わせて
〖〖あ、ああぁぁぁっ〗〗
〖工芸神ちゃんのおバカぁっ〗
〖レイに聞こえちゃったじゃないっ〗
〖レイっ!止めろーっ!目を開けろーっ!〗
『ぎゃーっ!誰か目をっ目を治してくれーっ逃げられねぇーっ』
〖お、おや?〗
レイさん、例のごとく目を閉じて魔力を⋯⋯前にあんなに言われたのに
『⋯⋯』
光の刃よ、飛んでけ~みたいな感じかしら?
ウィ~ン
〖〖ああああっ〗〗
〖工芸神何とかしろよっ〗
〖な、何とかと言われましても⋯⋯〗だらだら
『ぎゃーっ!なんじゃありゃあっ』
料理長、ようやく目が見えるようになったけど、見なきゃ良かった
『まったく、我が主ながら情けないぜ⋯⋯龍、あとは任せたぞ』
『仕方ねぇなぁ。やっちまえ』
ピシャーンっ
『きゃああっ』パタッ
〖〖ああっ〗〗
〖レイっ〗
『た、助かった⋯⋯』
〖そ、そうですね〗
いやいや、料理長、工芸神様レイさんの心配しようよ
ぱぁぁぁぁぁ
『⋯⋯』しゅうぅぅ
『はぁ⋯⋯人騒がせな』
『ほんとだよなぁ』
グリフォン様と龍様の活躍により危機は去った!
〖〖はあぁぁぁぁ〗〗へたぁ
〖ありがとう~。また神殿が壊れるとこだったよ~〗
〖あれが当たってたら今度こそ全壊したんじゃない?〗
〖やめてよ~〗
主神様と魔神様、腰抜けたみたい。
〖お前たち良くやった!〗
『命の恩人だな!後でご馳走差し入れするぜ』
〖それは楽しみですね〗
『何言ってるんだ?工芸神様は飯抜きだぜ』
〖なぜですかっ〗
〖いや、お前のせいだろが〗ぽかっ
〖痛いですよっ〗
工芸神様、今回はちゃんと反省しないと。繰り返したら大変⋯⋯
『ポンコツな主人を持つと苦労するよな』
『まったくだぜ。俺様たちに感謝してほしいよな』
今回の救世主の神獣様たち。グリフォン様がレイさんの頭上から雷撃を落とし、龍様が直ぐさま治癒魔法でレイさんを回復させた。
『でもよぉ、まだ始まったばかりだろ?この後まだ続くんだよな?』
『そうだな。張り切って色々やらかしてたからな』
『やっぱりか。俺様たちが何とかしないとだよな』
『そうだな』
『『はぁぁぁ』』
神獣様たち、頼りない主人を持つと大変だよなと、ため息つきつつ、まだまだ気は抜けないのでした。そして⋯
『⋯⋯』
レイさんは、まだ倒れたまま放置されているのでした。
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
毎度、遅くてすみません。そして、もはや毎年の恒例の叫び『確定申告終わったぞーっ』連日、夜中3時までかけて終わらせました。常日頃からちゃんとやれって話なんですけどね⋯⋯。皆さんどうやって終わらせてるのか?算数脳が欲しかった(泣)
レイさんも私も精進しなくては⋯⋯。やらなきゃいけないことがまだ山積み。ひとつずつ片付けながら、更新も頑張らないと!