猫の視線
猫には、絶対、人に見えていないものが見えているのだと思うときがある。
それまで、丸まって寝ていたと思ったら、急に立ち上がって、誰もいない方をじっと見る。それだけではなく、なにもいないのに、急に運動会のように家の中を駆け回ったりするのだ。虫やネズミを追いかけているのかと猫の向かう先を見るが、何もないということが、当たり前のようにある。猫には人間には見えない何かが見えていて、鈍感な飼い主の代わりに、それらを追い払っているのかもしれない。猫に何が見えているのか気になるが、昔から猫は飼い主のために化け猫になって復讐してくれたり、ちゃんとかわいがってやれば,飼い主にあだなすことはないだろうと思い、俺に何かあったら敵討ちしてくれよと今日も猫様の大好きなおやつを上げていた。
飼い猫が敵討ちしてくれるというのは、その前提として飼い主が不幸な目に遭うことが必然だと気づいたのは、俺が無念の死を迎えたときだった。