盗難指輪
「もしもし、今どこにいますか?」
「なによ、何か用」
「あなたが盗んだ指輪のことだけど」
「指輪? 指輪なんて知らないけど、なに、私が泥棒したって疑ってるの?」
「しらばっくれてもいいけど、あの指輪いわくつきで、前の持ち主、旦那さんと子供を一遍に亡くして、最期に独りが耐えきれなくて自殺したんだって、だから、縁起が悪いから、うちの知り合いのお寺に預けようと思ってうちにおいてたんだけど、さっきニュースで、あんたの家の近くで何か事故があったらしくて、子供を含めた死傷者が出てるって言ってたから、あなたが持ち出したのかと思ったんだけど・・・、本当にあれ、盗んでない?」
「な、なによ。私がやったと思って、それで鎌かけているつもり?」
「ごめんなさい、あなたじゃないのなら、とにかく警察に連絡する。それとニュースで、あなたの家の近くで事故があったのは本当だから、念のため旦那さんや子供の安否を確認したら?」