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第82話 当然のように支払いで揉める

「ああ、そう言えば皆さんの会計は……私は払わないわよ」 

 思い出したようにコーヒーを飲み終えたアメリアの言葉が福音にも聞こえた。

「なんだよ、ケチだなあ。この中で子供のランの姐御の次に稼いでいるのはオメエだろ?せっかくオメエの自慢の店に来てやったんだ。金くらい出すのが当然だろ?」

「西園寺。アタシを子供扱いするな。アタシは34歳だ。立派な大人だ」

 かなめの意識がアメリアの誘導したとおり別の話題にすりかえられた。そしてそのあおりを食らって子供扱いされたランが怒りを鎮めるためにうつむいて押し黙っているのも誠には不気味に見えた。

「まあ、しかたないんじゃないか?私達はただ尾行していただけだしな私も自分の分は払うつもりだ」 

 静かにカウラが頷く。かなめは同調してくれることを願うようにランに目を向ける。

「なんならアタシが払ってやっても良かったのによー。ただ、西園寺の分は払わねー。人を子供扱いした罰だ」 

 子供扱いされたことを根に持っているランはそう言ってカウラを見ながら財布を取り出した。

「ちっちゃい隊長!アタシが悪かったから!ちゃんとこれからは大人扱いしてやるから」

 殿上貴族で多くの荘園を持ち、タバコも一本千円の葉巻を吸っている割にこういうところでかなめは細かかった。 

「バーカ。全員のなら上官と言うことで払ってもやったが、西園寺だけの勘定をアタシが払う理由はねーだろ?それに人の気にしていることを平気で口にする馬鹿な部下を奢るほどアタシは心が広くねーんだ」
 
 そんな言葉にうなだれながらかなめはポケットからカードを取り出す。

「じゃあお勘定お願いします」 

 そう言うアメリアはすでにジーンズからカードを取り出して席をたっていた。

「今度は僕に払わせてくださいよ。大学の先輩がこういう時は男が金を出すもんだって言ってました」 

 誠の言葉にアメリアは首を振る。気になって振り向いた誠の前には鋭く突き刺さるかなめとカウラの視線があった。

「ちゃんとアタシ等が出るまで待ってろよな!」 

 そう言ってランはコーヒーのカップを傾ける。誠は彼女達を置いて一足先に店を出た。

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