第75話 例えゲームだとしても
しかし、アメリアの活躍は圧倒的だった。
アメリアの機体の色がオリジナルと違うのを見て、誠はもう一度丁寧にゲーム機の説明を読んだ。そこには端末登録をすることである程度の撃墜スコアーの合計したポイントを使って機体の設定やカスタムが可能になると書いてある。
「やっぱり相当にやりこんでるんだなあ。ここに来るのが久しぶり?アメリアさんの言うことは信用できないからな。アニクラに寄るたびに来てるって感じかな。これは完全にアメリアさんに騙されたってところだ」
敵の半分はすでにアメリア一人の活躍で撃墜されていた。空気を読んだのかアメリアはそのまま友軍機のフォローにまわるほどの余裕を持っている。
味方の集団を挟撃しようとする敵を警戒しつつ損傷を受けた味方を援護する。
「あのオリジナルカラーの機体の奴、凄いぜ」
「また落したよ、いったいこれで何機目だ?」
小声でギャラリーがささやきあう。誠はアメリアの活躍を複雑な表情で見つめていた。
最後の一機がアメリアのレールガンの狙撃で撃墜されると、モニターにアメリアの画像が大写しにされた。
「すっげー美人じゃん」
「女だったのかよ!しかし、かなりやりこんでるな」
周りでざわめいて筐体から顔を出そうとするアメリアをギャラリーが驚嘆の目で見つめる。
「はい!これがお手本ね。次はちゃんと正規パイロットらしいところを見せてちょうだいよ」
そう言ってゲーム機から降りたアメリアが誠の頭を軽く叩く。誠は周りを見回した。10人くらいのギャラリーが二人を見つめている。明らかにアメリアが誠とこのゲームセンターに一緒に来たと分かると彼らは悔しそうな顔で散っていく。
「もう一回やる?」
そう言うアメリアの得意げな顔を見ると、誠は静かに首を横に振った。
「遠慮します。こういうコアなゲームはやりこんでいる人には勝てませんから」
「言うわね、誠ちゃん。まるで私がカウラちゃんみたいなゲーム依存症患者みたいじゃないの」
アメリアは苦笑いを浮かべると再び誠の腕を手に取った。こんなに女性の近くに長くいた経験は誠にはこれまでなかった。
「ゲームはこれくらいにして、ちょっとついてきて欲しいの。連れて行きたいところが有るから」
いつもの見えているのかどうかも怪しい細目をさらに細めて、アメリアは楽しそうに誠にそう言った。