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「お願いだから、あんまり可愛いこと言わないでちょうだい。あたしのために」

「え、あ、はい」

「うーん、これなら寝れそうだわ」

「同じく」

「最後に1つ聞いていい?」

「はい?」

「下着、どお?」

「・・・どお、とは?」

「サイズはどうしようもないけど、穿き心地とか?」

急な泊まりで下着を用意していなかったため、わたしは今、早坂さんの新品のボクサーパンツを拝借中なのである。スウェットは持っている中で1番小さな物を貸してくれたが、わたしが着ては関係ない。何にせよぶかぶかなのだから。

「そーゆう意味では、最高ですね。開放感あるし。ハマりそう」

「プッ、ならよかったわ」

「買って返しますね」

「そんなことしたらおしおきよ?家でパジャマにでもしなさい」

「・・・空舞さんに何言われるか」

「いいじゃない。あたしのパンツを穿いて寝る雪音ちゃんか・・・フフ」

若干、寒気がした。

「わたし、早坂さんの服だけで1週間過ごせそうなんですけど」

「ハハッ、もうあなたの物なんだから好きに着るといいわ。あなたがあたしの物を身につけてくれると嬉しいし」

「じゃあ、これから愛用します」

「今まで着てなかったの?」

「なんか、もったいなくて」

「なんでよ、じゃんじゃん着なさい。それで仕事に行きなさい」

「それこそ、何言われるか・・・」

「それが目的だからいーの。見せつけておやり」

── 一真くんのことを言っているんだろうか。

「あー、あたしこのまま死んでも悔いは無いかも。なんならこのまま死にたいわ」

同じこと、考えてる。

「ふふ・・・」


朦朧とする意識の中で、わたしは早坂さんの背中に腕をまわした。ここに、早坂さんがいることを確かめるように。
出来れば、この先もこうやってそばにいたい。ずっと、そばにいさせてほしい。

おでこに熱い息がかかる。その熱と感触が消えないうちに、わたしは目を瞑った。


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