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第6話(2)骸骨兵士、襲来

 俺は窓の外を見る。鎧を身に着け、槍を持った骸骨の兵士が大勢詰めかけてきている。天の声が別の部屋から聞こえてくる。

「うおお! 骸骨兵士が入ってこようとしてるであります!」

「ど、どうするっぺ⁉」

 ティッペが俺に問うてくる。

「このままじゃ追い詰められるだけだ! 外に出るぞ!」

 俺は窓から外に出る。

「!」

 骸骨の兵士たちが一斉に俺に対して槍を向けてくる。

「むっ!」

「……やれ」

「‼」

「おっと!」

「!」

「うおっ!」

「‼」

「ぬおっ!」

「!」

「ぶおっ!」

 骸骨兵士たちが次々と繰り出してくる槍を俺はなんとかかわす。

「……」

「ちっ!」

「スグル! 大丈夫だっぺか⁉」

「意外と統制の取れた攻撃だが、なんとか回避出来ている!」

「……面倒だな」

「ん⁉」

「数で押すか……」

「……!」

「なにっ⁉」

 再びなにか声が聞こえたかと思うと骸骨兵士たちが槍を投げつけてくる。予想外の攻撃のため、俺は体を丸めて凌ぐのが精一杯だった。幸いにも刃先ではなく柄の部分が当たったので、痛みはそれほどでもなかったが、その後三度声が聞こえる。

「……かかれ」

「……‼」

 骸骨兵士たちが俺に飛びかかってきた。またも虚を突かれた俺は反応が遅れ、骸骨兵士たちに飛び乗られ、動きがほとんどとれなくなる。

「ぐっ⁉」

「……突き刺せ」

「なっ⁉」

「……!」

 他の骸骨兵士たちが俺に覆いかぶさっている兵士たちには構わず、槍を突き立ててくる。槍が兵士たちをすり抜け、俺の体に突き刺さろうとする。

「『突風』!」

「……⁉」

 凄まじい強い風が吹き、槍を持った兵士たち、俺に覆いかぶさっていた兵士たちがたまらず吹き飛ばされる。俺が視線を向けると、腕を組む監督と息を切らす天の姿があった。彼女たちの傍らには大きな団扇が置かれていた。天の【描写】で現した団扇であろう。

「横槍ならぬ、横風! 我ながらなかなか憎い【演出】じゃないかい?」

「そ、それがしに扇がせるのはなかなかミスキャストだと思うのですが……」

「アニメーターと言えど体力勝負だよ、天さん」

「そ、それにしてもですね……」

「まあ、見たまえよ、骸骨兵士たちはことごとく吹き飛ばせたよ?」

 監督が両手で目の前に広がる状況を指し示す。天が自らの手のひらを見つめながら不思議そうに首を傾げる。

「それがしにこのような風を起こせる力があるとは……」

「恐らくだが……自分の【演出】との相乗効果じゃないかな?」

「な、なるほど……」

「お、お二人さん、どうも、助かりました……」

「なに、礼には及ばないよ……」

 監督たちが俺のところに近づいてくる。

「それくらいで良い気になってもらっては困るね……」

「! また声が……」

「取り囲め……」

「………」

 骸骨兵士たちが俺たちを再度包囲しようとする。俺は舌打ちする。

「ちっ……」

「はっ、なんのこれしき……」

 監督が大げさに両手を広げて笑う。俺が問う。

「監督?」

「天さん、遠慮なく吹き飛ばしてやりなさい」

「け、結局それがしがやるんですね……」

「ふっ、冗談だ。団扇をもう二本、描写してくれ」

「は、はい!」

 天は自らが持っているのと同じ団扇を二本現出させる。監督は一本取って、もう一本を俺に渡してくる。俺が戸惑う。

「こ、これは……」

「三人で扇げば、三倍だろう?」

「た、確かに!」

「それではいくよ……せーの!」

「それ!」

「……‼」

 俺たち三人が扇いだ団扇の風が、俺たちを取り囲もうとした骸骨兵士たちを再度勢いよく吹き飛ばした。俺は快哉を叫ぶ。

「やった!」

「ま、ざっとこんなもんだよ」

「はあ……」

 今度はため息が聞こえる。俺は首を捻る。

「誰だ?」

「少しやり方を変えるとしようか……」

 骸骨兵士たちが立ち上がったかと思うと、槍を捨て、自分や他の者の手を駆使して、自らの頭部や腕の骨、脚の骨を取り外し始める。

「な、なんだ⁉」

「い、意味不明であります!」

「いや、これは……」

 戸惑う俺と天の間で、監督は顎に手を当てる。

「……やってやれ」

「………!」

 兵士たちは俺たちの方に向かって、骨を投げつけてくる。俺たちの下に多くの骨が転がる。天が気味悪そうにする。

「な、なんでありますか⁉」

「…………!」

「なにっ⁉」

 兵士たちは自分で骨を拾い上げ、腕や脚の骨と組み合わせて、自らの新たな体を作り上げてしまう。後方から投げられた槍を受け取り、槍を持った骸骨兵士たちがあっという間に俺たちの懐に入り込んできた。周りも囲まれている。監督が苦笑する。

「ほう……この展開は正直予想外だったな」

「ふう……これで詰みだね」

 ぼさぼさとした白髪で寝間着のような姿をした少年が俺たちの視界に現れる。

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