第11話 絵の具をそれぞれのコップに一滴垂らしました。どのコップに何色の絵の具が垂らされたでしょうか?
「おっと」
またシャボン玉に包まれるかと思ったら、いきなり地に足がついた。
「どこだここ……?」
地下ではない、窓がある。
正面には大きな扉だ。
豪勢な場所だな……宝石とかが当たり前のように飾ってある。
「貴殿がイロハ=シロガネか?」
背後から男の声が聞こえた。
振り向くと……大きな玉座に、顔がカボチャの奇妙な人型生物が座っていた。
「すまない。特急錬成に割り込んで貴殿だけをここに招待させてもらった
「カボチャの化物!?」
逃げようと距離を取ると、
「待った!
「嘘つけ! お前は怪しいカボチャだ!」
「違う! 吾輩は優しいカボチャだ! 話を聞け!」
……話もせずに怪しいカボチャだと断ずるのは失礼か。
足を止め、話を聞く姿勢を見せる。
「吾輩はランティス錬金学校校長、ジャック・
校長を名乗るカボチャ頭。
信じられない……錬金術師の学校の校長だから、白髪でながーい髭のお爺さんを想像していた。断じてこんなカボチャではない。
しかし……そう、錬金術師は
爺さんや俺のことを知っていることから、このカボチャが言っていることが真実である可能性は高い……。
「アンタが校長ってことは、ここは校長室ってことか?」
「その通りだ」
「……もしかして、アンタがヴィヴィが口利きした偉い人なのか?」
「うむ、その通りだ。吾輩が貴殿の入国手続きをしてやった。しかし……養子というわりにはアゲハの若い頃にクリソツだな」
カボチャ校長はどこか嬉しそうだ。
「なんで俺だけこんなとこに呼んだ?」
「一目見ておきたくてな。それに一つ確かめておきたいこともあった」
カボチャ校長は立ち上がり、玉座の側にあるテーブルを俺の前に持ってくる。
テーブルの上には水の入ったコップが7個。
「貴殿はアゲハと同じで色彩能力者なのだろう?」
「ああ、まぁな」
「少し、その色彩識別能力を試させてもらおう。これは入学試験と思ってくれ。この試験で不合格となればこのままアメリカに帰ってもらう」
「……いきなりそりゃないんじゃないか? 校長殿」
「本来、我が学園に入るには入学試験を受けて合格しなければならない。だが貴殿はその試験を受けずにここに居るのだ。これぐらいの無茶は許容してほしい」
残念ながら、この場においてルールはコイツだ。
このカボチャ校長の言うことに逆らう権利も力も俺にはない。
「わかった。試験を受けよう。そもそも拒否権なんてないしな」
「感謝するよ。では、試験内容を説明する」
カボチャ校長はコップに手を向ける。
この水の入った七つのコップ、これが入試に関係するのだろう。
「いまここにある水にはそれぞれ絵の具が一滴ずつ垂らされている。絵の具の種類は赤、青、緑、黄色、茶色、紫、ピンクの七色だ。どのコップに何色の絵の具が入っているか当ててくれ。――全部だ」
「……」
「正直、吾輩から見たらどれも変わらず透明な水だがね」
まったく、意地の悪い問題を出すものだ。
「右の端から緑、黄色、茶色、ピンク、紫――黒、白……だろ? 赤と青はない」
俺が言うと、カボチャ校長は「ほう……!」と声を漏らした。
「素晴らしい! ……これほどとはな!!」
カボチャ校長は拍手する。
「またその眼に会えるとは思わなかった! 合格だ!!」
「それなら早く最寄り駅へ運んでくれ。待たせてるやつがいるんだ」
「ふふっ、すまなかった。つまらない遊びに付き合わせてしまったね。床に合成陣が描いてあるだろう? その上に立ってくれ」
合成陣? この床に描いてある妙な図形のことかな?
図形の上に立つ。カボチャ校長がパチンと指を鳴らすと、図形が光り出した。瞬間、目の前が真っ白になった。
そして――分解が始まる。
「ぬっ、ぐっ――! まったくよ、アンタのせいで一回余計にこの感覚に付き合わされる……!」
「慣れれば心地よくなるさ。では改めて……入学おめでとう。イロハよ」
全身が崩れ去った。
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気が付いたら、石の床の上に居た。
周りに石の支柱が多く見える。窯も例の如く置いてある。制服を着た同世代の人間もいっぱいいる。どうやら今度こそ最寄り駅に着いたようだ。
「どどどどどいてください~~~!!!」
――真上から声がした。
「え?」
上を見た瞬間、鼻にシャボン玉の膜が当たり、シャボン玉が割れた。
そして顔面に柔らかい感触が激突する。眼前を覆うこの色は……ヴィヴィが履いていたスカートとまったく同じ色だ。
「ぐわっ!!?」
「むぎゃっ!?」
落下物の体重を支え切れず、俺は倒れ込んだ。