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クロエの気持ち3

 レティシアの頬を涙がつたった。チップはずっと一緒にいてくれたのだ。レティシアが辛くて仕方なかった時に。

 レティシアはかごみこんでチップの前に手を差し出した。チップは心得たようにレティシアの手に乗り、肩まで登った。

「チップ。ずっと一緒にいてくれたのね?とても嬉しい。ねぇ、チップ。これからもずっとずっと一緒よ?」
『当たり前だよ、レティシア。僕はずっとレティシアの側にいるよ』
「ありがとう、チップ」
『レティシア。これからどうするの?』
「うん。森でチップと二人で静かに暮らしたい。そして、たまにお母さんのお墓に会いに行きたい」
『・・・、そう。あのね、レティシア。人間の魂ってね、お墓の中にいるわけじゃないんだよ?』
「?。お母さんはここにいないの?」

 レティシアは急に悲しくなった。チップは慌てて言葉を付け足した。

『クロエはね、レティシアの側にずっといるんだよ?』
「お母さんが?」
『レティシアがいじめられて泣いていた時、クロエの気配を感じた事はない?』
「うん。とても悲しかった時、夢にお母さんが出てきてくれた事があった」
 
 夢の中でクロエは小さくなったレティシアを抱きしめてくれていた。

『そうだよ、レティシア。クロエはずっとレティシアの側にいたんだよ?そしてこれからもずっと。だからね、レティシアがこのお墓にとらわれる事はないんだ。レティシアがどんなに遠いところに行っても、クロエはレティシアを守ってくれているんだよ』
「・・・、お母さん」

 レティシアはポロポロと涙を流し続けた。ふと風が頬を撫でた。まるでクロエが小さなレティシアにしてくれてように、頬を撫でてくれたように感じた。

「ありがとう、チップ。ありがとう、お母さん。私、ずっとひとりぼっちだと思ってた。だけど違ったんだね、私にはいつも愛してくれるお母さんとチップが側にいてくれたんだ」
『うふふ、そうだよレティシア。じゃあもう一度聞くよ?レティシア、これからどうしたい?』
「チップ。大きくなって私を空に連れてって?新しく住む場所を探さなくちゃ!」
『オッケー!レティシア』

 チップはレティシアの肩から飛び降りると、ライオンほどの大きさになった。レティシアはチップの背中に飛び乗り、空へ舞い上がった。

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