第15話 笑いものにされる誠
『誠さん。起動は終わりましたか?』
別のウィンドウが開いてふんわかカーリーヘアーのひよこの顔が目に飛び込んでくる。どうやらラン達は本部棟で実験の様子を観測してデータを取るらしいことは誠にも分かった。
「今、終って待機しているところです」
誠の言葉にひよこは満足げにほほ笑んだ。誠はただ次の指示が来ることを待っていた。
『みんな笑ってますけど……見せてやりましょうよ!05式特戦の雄姿を!』
緊張した面持ちでひよこがそう言うと、あわせるようにして誠は固定器具のパージを開始した。
東和陸軍の面々はハンガーの入り口で誠の重装甲を感じさせる迫力のあるボディーの05式を眺めている。機動性を犠牲にすることで『タイマン勝負』に特化した05式の一風変わった姿にギャラリーはため息をつくのが誠にも見えた。
『凄いっすねえ、神前曹長。人気者じゃないですか!』
冷やかすように言う西を無視して誠は機体をハンガーの外へと移動させた。
「おい、西。頼むからあの野次馬何とかしてくれ。これじゃあ新兵器のところまでたどり着けない。何人か踏んづけちゃう」
神前の言葉を聞いた西が部隊の整備員達を誠の足元に向かわせる。ハンガーの前に止めてあったトレーラを見下ろした。視点が上から見るというアングルに変わり、誠はその新兵器を眺めた。
特に変わったところはない。05式で二番機担当の狙撃手、西園寺かなめ大尉が使っている230ミリロングレンジレールガンを二回りほど大きくしただけのようにも見えた。
これまでも法術や空間干渉能力を利用した兵器の実験に借り出されたことは何度かあったが、そのときの兵器達とは違い、これは明らかに兵器らしい兵器。攻撃可能な射撃兵器に見えた。
今回のそれは『巨砲』と言う言葉がぴったりとくるほどの大きさを誇っていた。それだけに誰もが認める射撃下手な誠にとってこの兵器は使い方が難しいと感じて誠は憂鬱な気持ちになった。
『こんな大きいの、どう使うんだ?西園寺さんならでっかい銃が持てるって大喜びするだろうけど……あの人は銃が好きだから。でも僕は射撃が下手だからな……5メートル先の的にだって拳銃の弾が当たらないんだ。なんで僕がこの射撃用にしか見えない兵器の実験なんかするんだ?もっと別の人がやれば良いのに』
誠は自分と違い、いついかなる時でも銃を手放さない女上司の西園寺かなめのたれ目を思い出して苦笑いを浮かべた。