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第14話 久しぶりの実機

「神前さん!とりあえずコックピットに乗っちゃってください。機体を起こしますんで!」 

 西は機体によじ登ろうとしている誠の背後からそう言うとトレーラーに飛び込んだ。それを見ながら誠はそのままトレーラーの足場に取り付いた。

 オリーブドラブに彩られた東和陸軍標準色の機体の上を歩いてコックピットに入った誠は、シミュレータでいつも操作している感覚でエンジンの起動準備にかかった。この05式を本格的に動かすのは『近藤事件』以来である。だが、隊にあるシミュレーションルームでの専用シミュレータでの訓練で実機の機能は使い慣れていた。

『神前さん!各部のチェックはいいですか?』 

 広がる全周囲モニタの中にウィンドウが開き、西の姿が映った。

「ああ、異常なし。そのまま頼む」 

 誠の言葉に西が頷くと誠の体が緩やかに起きはじめた。周囲が明るくなっていく、誠はハンガーの外に見える廃墟のような市街戦戦闘訓練場を眺めていた。そしてそこに一台のトレーラーが置いてあるのにも気付いた。

「西!あそこに見えるのが今日のテスト内容かな?」 

 神前の言葉に、西はそのまま一度05式用トレーラーから降りてハンガーの外の長い砲身をさらしている兵器を眺めた。九メートルの巨体を誇る05式と比べてその長さは優に05式の倍以上の長さに見えた。その砲身の左右にはスリットが設けられ、発射時の熱を放出する役割を果たすのだろうと、理系ならではの見方で誠はその『新兵器』を眺めていた。

『ああ、あれが今後神前さんのメインウェポンになるかもしれない『展開干渉空間内制圧兵器』ですよ』 

 淡々と答える西の言葉に誠はいまひとつついていけなかった。

「展開……干渉……? 」 

『詳しいことはひよこさんかクバルカ中佐に聞いてくださいよ。僕だって理屈はよくわからないんですから。まあ来る途中で仕様書を見たんですが『干渉空間生成の特性を利用してその精神波動への影響を利用することにより敵をノックアウトする非破壊兵器だ』ってことなんですけど……』 

 誠は正直なところ西の説明を聞いて目の前の兵器が何をするものなのかさらにわからなくなった。

 自分が『法術』と呼ばれる空間干渉能力者であるということは『近藤事件』で嫌と言うほどわかった。空間に存在する意識を持った生命体そのもののエネルギー値の差異を利用して展開される切削空間、その干渉空間を形成することで様々な力を発動することができるとランに何度も説明されているのだがいまいちピンとこない。

 直立した自分の機体で待機する間、誠はただ目の前の明らかに長すぎる砲身を持った大砲をどう運用するのかを考えようとしていた。だがいつものように何を考えているのか良く分からない隊長の嵯峨惟基のにやけた顔が思い浮かぶ。そうなるといつものように煙に巻かれると諦めがついてきた。

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