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第10話 これまでの実験と今回の実験

 誠は初の出撃にあたる『近藤事件』に於いて、その法術で一撃で巡洋艦のブリッジを破壊して見せると言うとてつもない活躍をして見せた。そのことがそれまで公然の秘密とされていた地球外知的生命体、遼州人の持つ『法術』と言うものの存在を遼州圏だけではなく、遠く地球圏まで知らしめることになった。

 『法術』とは地球人がかつて侵略したこの星、遼州に住む遼州人にごく稀にに発生する珍しい能力だった。その能力は多岐に渡り、誠も自分が使える瞬間転移が可能ですべての攻撃を無効化する壁『干渉空間展開』とシュツルム・パンツァーの持つ軍刀『ダンビラ』を用いて超大型の光に包まれた剣を作り上げる『光の(つるぎ)』以外の能力については詳しいことは知らなかった。

 ただ、ランが八歳児程度の身体で誠をはじめとする部隊員の誰よりも力が強いと言う『身体強化』能力や、彼女がその姿のままなのは彼女が『不老不死』の法術師だからと言うことは知識としては知ってはいた。

 また、隊の看護師である神前(しんぜん)ひよこ曹長にはどんな怪我でも瞬時に治療してしまう『ヒーリング能力』があることも野球部の夏合宿で知ることになった。

 だが、それが法術師のすべての能力ではないことは誠もうすうす察していた。それだけが法術ならば遼州圏も地球圏もこんなに大騒ぎをするはずが無い。ただ、誠の専用機である05(まるご)式乙型に装備された『法術増幅装置』と法術兵器を組み合わせることで『光の剣』以外の活用法も有ることはこれまでの法術兵器の実験で分かっていた。

 ただ、どれも05式の致命的弱点である機動性を上げるためのブースターや、思ったことを通信で伝えるのではなく、誠がターミナルになって法術で伝える装置と言った補助的な法術兵器ばかりで、誠が驚くような『新兵器』と呼べるような兵器の実験には立ち会ったことが無かった。

「今回は何をさせられるのかな……射爆場を使うってことはかなり派手な兵器だろうな……これまでとはきっと性質が違うんだ。気合いを入れないと」

 誠は明日の実験について考え始めると、その想像の収拾がつかなくなってただ混乱するばかりで眠れないまま時間だけが過ぎて行った。

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