下山
「こっちよ、こっち、絶対、大丈夫だって、ちゃんと見覚えあるから。この私が道に迷うわけない。だって、私、小さい頃にお父さんと何度か登ったんだから。なに、 この私が嘘ついてると思ってるの?」
彼女の言葉に苦笑を返す。
「だって、あんたって、昔から嘘つきで見栄っ張りなところあるから。山に慣れてるって言う割には軽装だし、全然、麓に辿り着けないし」
「だから、ここは来たことあるから、全部あたしに任せなさいって」
そう言われて、私は、今も、その友人と一緒に山の中を彷徨っていた。