第44話 毎日会いに来るケヴィン王子
魔法大会から数日後。
「ルーシーさん。お昼をご一緒いたしませんか?」
「ルーシーさん! 魔法の使い方を教えてくださいっ!」
「ルーシーさーんっ! 生徒会のイケメン先輩を紹介してくださーいっ!」
今まで、時々ローランドさん狙いっぽい、ルーシーの取り巻きの女の子が来るくらいしかなかったのに、やたらと話しかけられるようになってしまった。
けど、お昼ご飯を一緒に食べるくらいならともかく、魔法の使い方を教えるなんて無理だからっ!
むしろ私が教えて欲しいくらいなんだけどっ!
あと、よく来るルーシーの取り巻きの女の子は遠慮がなくなって、よりストレートになった!
まぁでも、ここまでは同じクラスの女子生徒たちだから良いんだけど、これとは別で困っている事がある。
「失礼。ルーシー、今日こそは付き合ってもらうぞ」
「えーっと、ケヴィン王子は隣のクラスですよね?」
「それがどうしたというのだ。それよりも、俺の魔法の訓練に付き合うのか付き合わないのか、どうなんだ?」
「いつも言っていますけど、放課後は菜園クラブがあるので」
休み時間の度に……とは言わないけど、ケヴィン王子が毎日やって来るのよね。
しかも、
「まぁ良い。では、ルーシー。これをやろう」
「……ネックレス?」
「実家にあった物だ。俺には不要の物だからな」
来る度に何かしらのプレゼントを置いていこうとする。
こんなの受け取れる訳がないじゃない!
「いえ、ケヴィン王子が要らないからって、受け取る訳にはいきません。そもそも、家にあった物……って、お城ですよね? 絶対に高い品じゃないですかっ!」
「別に俺からすれば高くはない。気にするな」
「気にしますっ! そもそも、こんな高い物は身につけられませんよ」
「くっ……その腕輪は普段から身につけているのに」
いや、これは魔法大会の賞品だし。
ある意味、自分で手に入れた物だから気兼ねなく付けられるし、性能が高いのよね。
一方、ケヴィン王子が持ってくる物って、高価ではあるんだけど、ステータス的な効果が何も無いっていうか、本当にただの装飾品なんだ。
だから、身につける意味が無い……は、言い過ぎかもしれないけど、私にとっては不要かな。
この学校では、誰かと恋に落ちたりする事もないから、着飾る必要もないしね。
「という訳で……というか、教室を移動しなきゃ! では、失礼します」
「これもダメなのかっ!? アイツらのレポートにも、高価なアクセサリーが好きだと……ま、まさか、もっと高価な物を!? ……俺の小遣いで買えない物となると……」
な、何だか不穏な言葉が聞こえてきたけど、無駄遣いはしないでね!?
王子のお小遣いって、要は国民の税金でしょ?
日本に居た頃は、私も社会人だった事があるから、お給料からもろもろ引かれて、残った手取りは……うぅっ、頭が!
それから今日も火魔法の授業に来たんだけど……なんだろう。誰かから凄く見られている感じがする。
最近、ずっとこんな感じなので、視線を無視して教科書を読んでいると、
「……ふむ。受ける授業は火魔法ばかり……と。あれだけの水魔法が使える事から、その反面、火魔法は苦手と思われる……」
すぐ隣から、何処かで聞いた事のある声が聞こえてきた。
「愛用の杖は、小振りの木の杖。宝石などの装飾などはなし。安物の杖に思える為、潜在魔力が非常に強大ではないかと……」
いや、安物の杖じゃないから!
世界樹の木で出来た、唯一無二の杖なのよっ! ……教えないけど。
「……って、ケヴィン王子の騎士の人? 何しているんですか?」
「ペンとノートも安物の平民が使うような普通の……おぉ、ケヴィン王子から調べ物を頼まれてな」
「はぁ……もしかして、私の事を調べているんですか?」
「うむ。ところで、一つ教えて貰いたいんだが、アンタの胸のサイズは……」
「教える訳ないでしょぉぉぉっ!」
ケヴィン王子……断った私が言うのも何だけど、部下は選んだ方が良いと思うわよ?