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福の神

「神様、お願い、うちから出て行ってください」
「ん? たくさんの福を与えたこの儂に出て行けと」
「はい、充分に福はいただきました。ですが、うちに金があるという噂が広まって、いくら防犯を強化しても、次々と泥棒がやってきて、安心して、眠れない日が続いています。警察から、ネットにうちのことが書かれて、世界中から狙われていると警告も受けましたので」
「だが、儂がおるから、今日まで大きな被害もなく無事なのではないかね」
「そうかもしれません。ですが、一生、神頼みと言うのは」
「つまり、お主にとっては、もう儂は福の神ではなく疫病神だから出て行けと」
「はい、すみません」
「一気に福が減るぞ、良いか」
「本当に今日まで、感謝しておりますが、命あっての物種というじゃありませんか」
「そうか、分かった。さよならじゃな、今後は平凡に生きるがよい」
「はい」

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