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「最低でも4階以上、オートロックのところにしなさい。出来るだけ早くよ」
──だめだ、すでに過保護モードに突入している。「ここが気に入ってるんです。河原も近いし。車、乗りますね」
「河原の近くにもセキュリティのしっかりしたところはあるわよ」
「そーゆうところは高いんです」
会話を遮るように助手席のドアを閉めた。早坂さんも続いて運転席に乗り込む。
「家賃のこと?出してあげるわよ」
「・・・それを、はい、お願いしますって受け入れると思いますか?」完全に呆れ口調になった。
「気にしなくていいのよ?」
「無理です」
「あたしの為だと思って、ね?」
「嫌です」
早坂さんは不満そうに黙り込んだ。「まあ、なんとかするわ」そう呟き、車を発進させる。
なんとかって、何をするつもりだ。ちょっと、怖くなった。
「今日は瀬野さんとは別行動なんですね」
「なんのこと?」
「や、前回は瀬野さんが迎えに来てくれたので」
「なあに?瀬野のほうがよかったの?」早坂さんの口が尖る。
「いや、道的に瀬野さんがわたしを拾って行ったほうが効率がいいって前に言ってたから」
「それはそうだけど、今日は瀬野は来ないわ」
「えっ!!」ということは、2人きり?おばあちゃんは居るにしても、急に緊張してきた。瀬野さんには声をかけなかったんだろうか。
「一応声はかけたんだけどね。用事があるみたい」
──なんだ。あえて2人きりを選んだわけじゃないのか。内心、少しふてくされる。
「まあ、あたしとしてはラッキーだけど」
早坂さんはいたずらっぽい笑みを浮かべた。また、意味深な発言だ。でも、そんな何気ない一言で一喜一憂する自分がいる。
「・・・おばあちゃん、元気ですか?」
「ええ、元気よ〜。あなたに会えるの楽しみにしてたわ」
「ふふ、わたしも楽しみです」