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「わさびだ!そしてとうとうってなんだ!」
「まあ、それはないか。早坂さん、アンタの事溺愛してそうだし」
「・・・溺愛って・・・」
春香は2杯目のビールを頼み、わたしも濃いめのハイボールを追加した。勢いをつけなければ話せそうにない。
「ヤケ酒?」
「・・・まあ、ある意味」
「何があったのよ」
「・・・あのさ・・・」とは言ったものの、切り出し方がわからない。ここはグダグダと経緯を説明するより、ハッキリ本題に入ったほうがいいよね。
そうこうしている間に、追加のお酒が運ばれてきた。春香はビール、わたしはハイボールをゴクゴクと喉に流し込む。そして、春香は痺れを切らしたようにジョッキをテーブルに置いた。
「あーめんどくさい!早く言え!」
「キスッ・・・」情けない事に、その一言しか出てこなかった。
「キスゥ?されたの?」
当たり前のように察してくれる春香に感謝だ。
「うん・・・と言っても、首にだけど」
「首にって、それどーゆうシチュエーションよ?押し倒された?」
「ぶぁ・・・っか!違う!その・・・抱っこされてて」
「抱っこぉ?待って、全然状況が掴めないんだけど」
「とにかく!状況は置いといてっ・・・首にキスする心理って、なに?」
春香は呆れたように上を向いた。「なんだ、ただのノロケか」
「ちがーう!本気で悩んでるんだって!」
「逆に何をどう悩むわけ?」
「だから、向こうが何を考えてるかわかんないから・・・」
「アンタら、本当に付き合ってないの?」
「付き合ってない!」
「嫌だった?」
「・・・何が」
「キスの話をしてるんでしょうが!」
「声がデカい!・・・嫌というか、驚いてそれどころじゃなかったというか」
「答えになってないわよ。嫌だったの?」
「・・・いやぁ・・・?じゃ・・・ない?」
「どっちよ。正直に言ってみなさい」
あの時の感情に、"嫌"という物が少しでもあったか?考えて、すぐに答えは出た。
「じゃない」
「はいおめでとう」しれっと言い、春香は自分のジョッキでわたしのグラスを鳴らした。
「なにが?」
「カップル成立記念」