同棲中
「俺の部屋の前で、下向いてウロウロしてる女がいてさ、何してるのって声掛けたら『部屋の鍵落したみたいで』って言うんで、とりあえず、一緒にその辺り探してあげたんだ。同じアパートの住民と思ってさ」
「なんだ、同じアパートの女性と親しくなるいいきっかけだったんじゃないか。美人だったのか」
「いや、それが、なかなか鍵が見つからなくて、俺は、『大家さんに連絡したら? 何号室です?』って尋ねたら、その女俺の部屋を指差して。『いや、そこ、俺の部屋ですよ』って言ったら、『ここは私の部屋』って、すごい怖い顔で睨まれて、『あんたが私の部屋の鍵取ったの!』と」
「なんだそれ、どうなったんだ」
「いや、どうも、俺の前の住民らしくて、事故で死んだらしくて、遺族が部屋の荷物を引き取って、別に、その部屋で自殺したわけでもないから、そのまま俺に貸したらしくて」
「住民が外で死んでたから事故物件じゃなかったのか」
「らしいな。別にその部屋を借りた住人が連続して死んだといういわくもないから、普通に貸し出したらしい」
「で、その女は?」
「ここは自分の部屋だって出て行かなくてさ」
「出て行かない? いるってことか?」
「そういうこと」