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第11話 全く捗らない火魔法

 さて、いよいよ初めての授業だ。
 何としても自力で魔法を使えるようにならなきゃ!
 そう考え、気合いを入れて待っていると、続々と生徒が教室に集まってきた。
 かなり生徒が多い気もするけど、他の授業もこんな感じなのかな?
 ゲームでは他の生徒が何人くらい同じ授業を受けているか分からないけどね。

「……あの人が学園で一番格好の良いディラック先生なのね」
「……確かに格好良いわよね。確か、子爵家の次男でしたっけ」
「……そうよ。何でも、魔法の才能を見込まれ、学園長自らスカウトしに行ったらしいわよ」

 周囲の女子生徒たちがヒソヒソと話しているのが聞こえてくるけど、やっぱり凄い先生だから人気の授業みたいね。
 ただ、男子生徒よりも女子生徒の方が圧倒的に多い気もするけど。
 少し待つと、イケメン先生――もといディラック先生が口を開く。

「皆さん、おはようございます」
「きゃあぁぁぁっ!」
「僕は、この学園で火魔法の授業を担当するディラックと言います」
「きゃあぁぁぁっ!」

 いや、周囲の女子生徒がうるさ過ぎるんだけど。
 一言話す度に、黄色い声を上げるのはどうなの!?
 とりあえず、ディラック先生の話を纏めると、魔法学園での授業は、基本的にその科目において好きな事をして良いらしい。
 で、教科書を読んでも分からない場合は、教室にいる先生へ質問をして教えてもらう……って、要は自習って事!?
 このゲームシステムでの授業は先生が大変そうだと思っていたけど、これならメチャクチャ楽じゃん! というか、基本的に何もしないって事でしょ!?
 まぁでも、その分自分にあった、自分のペースで魔法の勉強が出来るから良いか。
 早速、火魔法の教科書をめくり、最初に書かれている意味不明な文章と格闘する事に。

――魔力は万物の源である――

 最初の一行目がこれなんだけど、その説明が何処にもない。
 何これ? というか、これの意味を教えて欲しいとか、そんな質問でも良いのだろうか。
 そんな事を考えて居ると、

「ディラック先生! ここが分からないので、教えてください!」

 既に先生の前に長蛇の列が出来ていた。
 ……嘘。皆、入学して最初の授業だよ!? いきなり、そんなに沢山質問する事があるの!?
 よく見れば、制服から二年生の女子生徒も並んでいる事が分かるけど……というか、質問の列に並んでいるのが女子生徒しか居ないんだけどっ!
 仕方なく、先程の一文は飛ばして、少しでも分かりそうな所から読んでいく事に。
 ……ただ、魔法を使う事が誰でも出来る前提だからか、そもそもの魔法の使い方とかが載っていなくて、いきなり火の精霊を召喚する方法だとか、魔法陣の例だとかが書かれている。
 精霊って何!? ユリアナみたいな存在の事を言うの!?
 とりあえず、列が短くなったら私も質問に並んでみようかと思ったんだけど、一時間目の授業が終わっても列は途切れず、列はそのままで二時間目の授業に突入し、三時間目も……って、全然無理っ!
 今朝みたいに、一番乗りで来て質問するのが良いのかな。

「あれ? よく見たら列は短くなっていないのに、教室に居る生徒は減ってる?」

 何気なく質問の列を眺めていて気付いたけど、教室内の人が少なくなっていた。
 ……あー、男子生徒が居なくなってるんだ。
 女子生徒はディラック先生と話したくて列に並んでいるのかもしれないけど、男子生徒は私みたいに、本当に分からない事があって質問したくても、これじゃあ質問出来ないもんね。
 一コマ毎に受講する授業は好きに変えられるから、先に違う科目から受けて、火魔法は後回しにするんだろうな。
 私もそうしたいけど、火魔法以外は一応使えるといえば使えるから……あ、結局教科書を眺めているだけで午前の授業が終わっちゃったけど……これ、大丈夫なのかな?

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