天の巻
「これでやっと二つ目ね」
何がです?
「神器に決まってるじゃない。全く【
は、はあ……
一応設定がそうなってますので……
「後から出てくる人たちはいいわよ、楽で……私と
い、いや「バカみたい」と言った時点で、すでにイメージがくずれ……
「とにかく、今後の展開にも最新の注意を払ってくださいね!」
わ、分かりました……努力します。
「……まあいいわ。一応メインキャラでもあるし、何とか頑張るわ」
ありがとうございます。
助かります。
喜びの極みです。
ははぁ……(筆者土下座)
……以上、推古尊《すいこ たける》ちゃんのお茶目?なクレームでした。
*********
伊織を家に送り届けた帰り道で、その死闘は続いていた。
川沿いを歩いている最中に、突然襲われたのである。
相手は一見すると例の黒装束だが、頭部から突き出た赤い角が【新たな刺客】である事を示していた。
動きも、これまでとはまるで異なる。
両手に
とにかく速い。
得意の居合術も、構える隙が全く無かった。
甲高い金属音と火花を散らしながら、じりじりと後退する。
土手際に生える樹木に背中が当たり、後が無くなった。
身を
このままでは危ない!
防戦するのも限界と判断した時空は、一か八かの賭けに出た。
大きく身を沈めると、一気に相手の
逃げられないのであれば、逆に間合いを詰めて攻撃の隙を狙うしかない。
一瞬でも相手の手が止まれば勝機はある。
だが、その策は失敗に終わった。
もう一歩のところで、今度は赤角の方が身を翻したのだ。
しまった!
読まれたかっ……
心中を後悔の念が走ったが、もはや手遅れだった。
灼熱の痛みが、全身を襲った。
樹木を背にした時空の肩から、血が
赤角の深紅色の目に、勝利の光が宿る。
ウオォォォォォン!
トドメを刺そうと両腕を振り上げた瞬間、辺りに轟音が鳴り響く。
手を止めた赤角が、驚いたように振り返った。
その音は、まるで動物の雄叫びのようだ。
そして次の瞬間、林の中から【それ】が姿を現した。
見覚えのある縦縞に、茶色の体毛──
虎だ!
体長は、優に大人二人分はあるだろう。
何故、こんな所に虎が……!?
出血と痛みで意識が混濁し、思考が思うように働かない。
だが錯覚や幻で無い事は、赤角の様子から認識できた。
異形の注意は、すっかり時空からその猛獣に移っていた。
虎は、その巨体からは信じられない程の瞬発力で、赤角に襲い掛かった。
さしもの異形も、避けるしかなかった。
時空から離れた赤角は、虎の放つ俊敏な攻撃に果敢に応戦した。
刃物のような爪と牙を、神速のフットワークで
反撃の機を
虎の爪が大きく弧を描いた瞬間、勝負はついた。
鈍い音と共に、赤角の短剣が喉に食い込む。
獣は唸り声を上げ、地面を転がりまわった。
口から血の泡を噴き、のたうつ巨体の動きが徐々に弱まる。
やがて低い唸り声を残し、完全に停止した。
虎が絶命した事を確認した赤角は、仕切り直しとばかりに時空の方を
だが、時空もじっと待ってはいなかった。
思わぬ助っ人により、体勢を立て直す余裕ができた。
脇に剣を納め、居合の構えを取る。
相手の攻撃に合わせ、
赤角の肩口から背中にかけて、血しぶきが舞う。
「ギャィィィっ!!」
悲鳴を上げ、のけぞる異形。
人間離れした跳躍力で宙を跳ぶと、
極度の疲労と激痛により、その場に倒れ込む時空。
遠のく意識の中で目にしたのは、塵のように霧散する虎の亡骸だった。