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第14話 唯一王 海水浴を楽しむ

 日の光で眩しく反射する白い砂浜が広がるエリア。周囲に人気は全くない。
 これが海か、入ることができて嬉しい気分だ。

「フライさん、準備はできました。そっちに行きます」

 後ろからフリーゼの声が聞こえる。

 そういえばどんな水着を選んだか見ていない。男の俺が水着を勧めるのもなんだし、彼女任せにしていた。
 どんな水着かな。フリーゼのことだろうから、機能美優先で白一色とかもあり得る。それとも意外とフリフリのかわいい水着とか選んでそう。

 そして着替えを終えたのかフリーゼが森から出て来た。

「着替えの方、終わりました」

「そうか、って何だよその水着は!」

 俺が驚いたのはフリーゼが選んだ水着。
 何で寄りにもよってそんな水着を選ぶんだお前。


 簡単に言うと、本当に隠さなきゃいけない局部を除いてすべてが見えてしまっている、普通の水着よりも大変露出度が高い水着だ。

 確か、マイクロ水着というやつだっけ。キルコが興味本位で一回着ているのを見た。

「どうでしょうか。似合っているでしょうか」

 驚いている俺のことなど気にも留めず、見せびらかす様にくるりと一回転。

 後ろを向けるのは、もっとやめてほしい。純白で、桃のようなお尻が、見えてしまっているのだから。

 起伏の激しい、スタイルの良い身体が、ほとんど露出してしまい、目のやり場に困る。特に胸の部分は最低限のところしか隠されていない。
 見ているこっちが恥ずかしいくらいだ。

 そんな俺の気持ちなどお構いなしに、はてな顔で息が当たるくらいまで俺に接近してきた。

「もしかして欲情してしまっているのですか? 」

「ち、違う。かわいいから、早く海に行こう」

 仕方がない。とりあえず海に入ろう。
 俺はフリーゼの手をぎゅっと握り海へと入る。

 絹のような、滑らかで柔らかい手。ずっと握っていたいと思えるような手だ。



 腰までつかるところまでつかった俺とフリーゼ。時々波が体を揺さぶる感覚が心地よい。
 フリーゼは、その感触に、はっと驚いた表情になる。

「すごい、です。水につかった感触。とても気持ちいい──」

「そうか、それはよかった」

 今の表情、いつものような無表情の中、どこか明るさと笑顔のようなものが混じっているような気がする。

 多分本当のことを言っているのだろう。喜んでくれて、本当に嬉しい。

 それから二人で海水浴を楽しむ。
 身体を水に浮かせたり、波に任せて体をプカプカと浮かせたり──。

 フリーゼは、楽しみ方を知らなかったせいか、興味本位で俺のやった行動をマネする。
 一つ一つの動作に興味津々になっているのが表情から分かる。
 彼女のそんな表情、もっと見ていたい。


 ちょっと、彼女には表情を柔らかくなってもらう。

 これはどうだ。試しに海水を彼女の顔に軽くかけてみる。
 彼女は無言のまま戸惑い、海水を飲み込んでしまう。すると──。

「ゴホッゴホッ──。こ、これ……しょっぱい」

 困惑する表情のフリーゼ。
 しょっぱい海水の味にびっくりしたのだろうか、吐き出してしまう。
 そういえば、海水というのを知らないんだもんな。

 そして、俺の真似をするように海水をかけてくる。

「フライさん。お返しです」

 そう言って、同じように俺に顔に水をかける。
 その表情は、どこかうれしそうになっているのを感じた。

 時々波に足を取られそうになる。すると、フリーゼは俺の腕を強く掴んできた。

「す、すいません。海というものが、慣れていなくて」

「い、いいよ別に」

 ただ、そのたびに彼女のたわわな果実の肉厚を感じてしまうのが気になる。おまけに、マイクロ水着だから谷間とか、たわわな果実とか、最低限の部位以外見えてしまってどうしても気になってしまう。

「フライさん。顔が真っ赤ですよ。どうしたのですか?」

「大丈夫だ。気にしなくていいから」

 理性を保つのが、とても大変な時間だ。

 一時間ほどの海水浴を終えて、俺たちは体をふいて服を着た。
 楽しい海水浴。またどこかで楽しみたいな。

 そんな余韻に浸りながらふと森を見ると、誰かが森を抜けてきたのがわかる。
 見たことがあるような人影。



 それを見た瞬間、急に現実に引き戻されるような気分になる。
 目つきが悪く、ドクロの首飾りをつけているのが特徴な男。
 ウェルキだ。

 後ろにはアドナ、キルコ、ミュアもいる。

「あっ、フライ。何やってんだよ」




「何って、早めに来て疲れをとっていただけだよ」

 ウェルキは俺に近づくなりにやりと笑みを浮かべ、自慢げに話しかけてきた。

「よう。お前、弱いから協力者が欲しいんだって? だからついてきてやったぜ。お宝と名誉は全部俺がいただいてやるけどな」

 隣にいたフリーゼが無表情のまま言葉を返す。

「違います。海底遺跡に行くには私の転送術式が必要なのですが、私の周囲の人物でないとそれができないからです」

「それに、精霊がいるってことは強力な魔力がある。だから強い魔物や強力なトラップがある可能性が高い。複数パーティーがいれば集団でそれらを倒していくことも出来るし、もしパーティーが壊滅的な被害を受けても、他のパーティーに発見され助かる確率が高くなる。生き残ることだけを考えれば、合理的な策だ。文句あるか」


 俺の言葉、アドナも腕を組みながら言葉を返してきた。ニヤリと、見下すような笑み。

「はいはい。一人じゃ怖いからみんなで行こうってことか。雑魚で唯一王の貴様が考えそうな策だな」

 言い訳にしか聞こえてないってことか。もういい、勝手にそう思ってろ。

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