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「早坂さんの過保護ぶりって、なんかこう、娘を溺愛するお父さんみたいな?そんな感じがするんだよね」
「不満なの?」
「え?いや、不満とかじゃないけど」
「あらららら〜〜?そんな顔してますけどお〜〜?」
この憎たらしい顔を、どうにかしてやりたい。でも、挑発には乗らない。天然記念物も学習はするのだ。「そんなんじゃないよ。ただ、なんでそこまでするのかなって、思うだけ」
「なに大人ぶってんのよ。つまんな。まあ、どんな意味にせよ、アンタの事を大事に思ってるってことでしょ」
「だから・・・なんで?そしてわたしは大人だ」
「そんなん本人に聞きなさいよ」
「聞いた」
「それで?」
「・・・りたいって」
「ヤリたい?」
「ぶっ・・・ぶぁっか!!守りたいらしい!」
「守りたい、ねえ・・・向こうもアンタの事好きなんじゃない?」
「・・・はっ!?てか、向こうもってなんだ!」
「知らないけど。普通に考えて、好意がなければそんな事言わないわよ」
「好意・・・ねえ」少なくとも嫌われてはいないだろうが。今までの事を考えても、早坂さんのわたしに対する接し方は、過保護な親だ。
"あなた、昨日具合悪そうだったから悪化して寝込んでるんじゃないかって心配したのよ。ちゃんとご飯食べてる?"
今日の電話で早坂さんに言われたのを思い出す。わたしの体調に気づいてたんだ、と思いながら──やっぱり、オカンだ。
「ところで、彼女いるか聞いた?」
「・・・聞いてない」
「なんでよ」
「忘れてた」
「次はいつ会うの?」
「明日」
「じゃあその時ヨロシク」
「聞けたら、ね」
「聞けない事あるわけ?アンタは気にならないの?」
答えられないのが、答えになってしまった。
「正直でか〜わい〜わね〜〜」春香に指で頬をグリグリされる。そして力が強い。
「やめい!そして痛い!・・・ていうかさ、まだゲイじゃないって確信もないじゃん」
「まあ、確信はないわよ。でも、ほぼ間違いなくストレートね。あたしのセンサーが反応しないもの。あれだけ堂々とオネエ言葉使ってるのも納得だわ」
そのセンサーとやらを、どうにか分けてもらえないだろうか。
カンカンと、ドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませー」
明日、それとなく聞いてみるか。春香のために。