76.もち帰って! 記録
『貴女が、キュウビ キュウビさんですか? 』
ああっ。
ゲコンツ星の1人が、やっちゃった。
『その呼び方、やめてくれませんか』
私も、やったことある。
ホントはキュウビ キュウビだけど、名前か名字か、わからない。それに。
『キュウビ クオと、呼んでください』
九尾さんは、自分の名前が嫌いなんだよ。
嫌な、お偉いさんが勝手につけた名前だから、だと言っていたっけ。
異能力者を無能力者よりすぐれてると思い込みたい威張りんぼだったらしいよ。
さらにイヤなことに、我が特務機関プロゥォカトルにも、そんな人はいる。
そもそも、創立理由が異能力者に無能力者の力を示すことだったりする。
だからわかるよ、そのイヤさ。ムダさ。
『し、失礼しました。
キュウビさま』
リッチーさんに続いて、二度目の謝罪になったね。
『良いですよ。
紛らわしいし』
クオさんが霧のモニターに写したもの。
それはハッキリ見える、田んぼだった。
時刻も写しだされてる。
『これは、先ほど撮影された、最後の戦闘です』
暗視映像だった。
わずかな光でも増幅させて、昼間と同じように写された光景。
スマホにアップされた動画を、拡大したんだ。
『ハンターキラーの・・・・・・私たちの仲間が撮影した映像は、専用サイトで・・・・・・情報を共有するコンピュータのネットワークがあるんです。
それを使えば、映像でも文章でも見ることができます』
まごつくよね。
私たちが使う言葉が相手と同じかわからないときって。
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私たちのいる場所から山ひとつこえると、海に向かって広がる扇状地がある。
映像はそこを、ドローンで見おろしたものだった。
田んぼは一辺が30メートルはある。
一町歩(イチチョウブ)ってサイズが、何枚もならんでた。
青々とした長くのびたイネの葉が、風に波うってる。
そのイネを、無惨な足跡が断ち切る。
田んぼの中心を赤くくすぶらせて、激しくゆがませて。
夜より黒い影が、うごめいていた。
魔法炎をまとった、こん棒エンジェルス!
その身長にあった、こん棒をもってる!
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「あんなの、いたんだ。
20メートルはあるよ」
安菜のおびえるとおり、驚異と言って良いよ。
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その20メートル巨人を、火花がのけぞらせた!
砲撃だ!
カメラが動く。
田んぼのまわりには、住宅地が広がる。
その家の間からドドドッと発射の炎が見えた。
濃いミドリ色の4本足のロボットがいた。
ウィットネス・ディパーチャー。
朱墨ちゃんが渡したセカンド・ボンボニエールをあやつる、ハンターキラーの1人。
車体上に新たにつけられたのは、ブッシュマスターⅢ 35ミリ機関砲。
発射を終えると、4本足にはいたジェットエンジンが火を噴く!
一気に道路を低空飛行!
ショッピングモールの屋上駐車場へ。
なぜか、1人だけいた人が逃げていく。
また砲撃。
でも、たおせない。
巨人にみつかった。
こん棒から、ふりぬかれた黒い炎がとぶ。
住宅をなぎたおし、キノコみたいな炎を巻き起こす!
ディパーチャーは直撃はさけた。
砲撃を続ける!
その時、巨人の左右から、新しいジェット噴射が近づいてきた。
先に近づいたのは、カーキ色だった。
セカンド・ボンボニエールと同じ、4本足にタイヤをつけてる。
でも、よりスマートで、スピードをだしてる。
マークスレイと言う装甲車、その姿を借りた機械生命体のハンターキラー、ルインバードさんだ。
発砲音と発砲音の間が聴こえないほどの銃撃!
機関銃、M134ミニガンの、6本の銃身が回転して次々に銃弾を取りこみ、火を吹く。
発射速度を1分に2000発から6000発に調整できるのを最速にして。
巨人はそれをこん棒と腕でかばえただけで、動きを止めた。
銃撃が止まる。
その一瞬のあと、赤黒い固まりが巨人の背中に突撃した。
ガン・ウィットネス。
ウィットネス・ディパーチャーとコンビを組む、セカンド・ボンボニエール。
右手にはマチェット、刃渡りの長いナタが握られてる。
それで、巨人の背中を切り裂いた!
左手は、グラップルに置きかえてあった。
ショベルカーなどの建設機械も使う、重たいものをつかむための手。
それを、切り裂かれた背中に突っ込んだ!
ゴキゴキ
私たちのときと同じ、魔法炎の割れる音をひびかせて、パイロットを引き抜いた!
やっぱり、黒い破滅の鎧だった。
ガン・ウィットネスが飛びさる。
直後、巨人の体が黒い爆発を起こした。
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『あの、お姉ちゃんたち? 』
通信がとどいた。
弟のデォメイション・フルムーン、みつきから。
『僕たち、夕飯の準備すんだよ。
あとは、お姉ちゃんと安菜さんだけだよ』